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『最後の手紙』【原创】2008-6-30 16:57:22

第八话
『最後の手紙』

シェアハウスを出ようと決意した瑠可(上野樹里)は、
美知留たちに内緒で不動産会社を訪れる。
「都心に比べると、お家賃は大分お安いですよ。
 それに、敷金礼金も頂きませんし。」と不動産会社の担当者。
「ありがたいです。
 半年ぐらいしか住めないと思うんで。」と瑠可。
「どういうご事情で?」
「半年経ったら海外に行くつもりなんです。」
「へー。海外!すごいですね!」

シェアハウス
二人分のお弁当を作る美知留(長澤まさみ)。
「おはよう!」エリ(水川あさみ)が起きてきた。
「おはよう!」
「何作ってんの?」
「タケル君と、二人分のお弁当。
 ヘアメイクの仕事教えてもらうからそのお礼に。」
「タケル君か・・」
「エリーも食べる?から揚げ。」
「ううん。大丈夫。ありがと!」
笑顔でそう答えながらも、複雑な表情を浮かべるエリ。

部屋に戻ったエリは、自分が酔った勢いでタケルに迫った時のことを
思い出していた。
「どうなってるんだろう・・。」


タケル(瑛太)のアシスタントとして働き始めた美知留だが、
美知留がタケルに告白して以来、ふたりの間はどことなくぎこちなかった。
「・・・タケル君。」
「うん?」
「この前の、ことだけど・・」
「・・・」
「気にしないでね!私、なんか変なこと言っちゃったけど、
 私はただ、タケル君が、辛かったり、寂しかったりしたときに、
 側にいてあげたいって思っただけ。
 何か特別なこと期待してるわけじゃないから。」
「・・・ありがとう。」穏やかに微笑むタケル、そして美知留。

シェアハウス
タケルがホットプレートでお好み焼きをひっくり返すのを
楽しそうに騒ぐ4人。
「じゃあ当分タケル君のアシスタントやるんだ、美知留ちゃん。」
と友彦(山崎樹範)。
「うん。美知留ちゃんよく働いてくれるし、礼儀正しいから
 事務所の社長にも気に入られちゃって。」とタケル。
「えーでも、お給料安いんでしょ?大丈夫?」とエリ。
「全然!勉強にもなるし。」と美知留。
「良かったね美知留。
 これからは、仕事で辛いことがあったり、嫌な事があったら、
 タケルに相談するといいよ。先輩なんだから。」と瑠可。
「うん!」
「あ!先輩といえば林田さん!どうなのその後!
 上手くいってんの!?」とエリ。
「え?」
「連れてきたっていいんだよ。
 こうやってさ、お好み焼きとかやるときは、大勢の方が楽しいんだしさ。」と友彦。
「誘ってみるけど、多分来ないんじゃないかな、あの人。
 なんか、若い人たちと話合わないって言ってたから。」
「若い人って、そんな年変わらないでしょ、俺と。」と友彦。
「若い人って言ってるけど、若いけどオグリン入ってないからね!」とエリ。
「え!?」とオグリン。
「え!じゃないよ。」
その時、インターホンが鳴る。
「あ、誰か来た。」とエリ。
「誰だ!誰だ!誰だー!」
『ガッチャマン』の歌を歌いだす友彦に呆れながら、エリは玄関へ。

玄関の戸を開けると、子どもが立っていた。
「こんばんは。」
宗佑(錦戸亮)が助けた直也(澁谷武尊)だ。
「こんばんは。どうした?誰かに用事?」
「美知留って人にこれ。」
直也が手紙を差し出す。
そこへ瑠可がやって来た。
「何?」
「あ、美知留ちゃんにだって。」
エリが瑠可に手紙を渡す。
封筒の裏には、Sの文字。
「宗佑・・あいつだよ!」
「え!?」とエリ。
「じゃあね!」直也が帰っていく。

手紙を広げる瑠可。

『美知留へ
 僕は今、常陽総合病院に入院しています。
 やっと手を動かせるようになって、この手紙を書いている。
 会いたい。
 一度会いに来てくれないか。
 どうしても君に会いたいんだ。
 待ってる。
 宗佑』

「常陽・・総合病院?」とエリ。
「罠に決まってる!
 この手紙、美知留に渡すことないよ。」
そう言いエリに手紙を渡す瑠可。

常陽総合病院
手紙を書き続ける宗佑。
看護師が、客が来たと知らせにくる。
やって来たのは・・エリだった。
「お見舞いのメロン、持ってきたよ。」
「・・・」
「美知留ちゃんが来ると思った?残念でした!
 ついでに、これ返しておくね。」
テーブルに手紙を置くエリ。
「哀れだよねー。
 美知留ちゃんのこと叩いたり殴ったりしてたくせに、
 手足もがれたら何も出来ないんだものね。
 力でしか女の子を引きとめておけないなんて、
 情けないと思わないの?」
「・・・」
「じゃあね。メロン、あとで食べて。」
「ちょっと待って。
 頼みがあるんだ。」
宗佑はそう言うと、怪我をした手を引き出しに伸ばしていく。
見かねて手伝うエリ。
引き出しの中には、美知留宛ての手紙の束が入っていた。
「美知留に渡してくれないかな。」
「・・また手紙!?」
「新しいメアドはわからないし、
 シェアハウスに送っても、どうせ又、誰かに邪魔されるし。」
「そりゃそうだよ。私だって渡さないし。」
「渡してくれる?」
「・・・」
「君は優しいから。」
「・・・
 私は・・あなたみたいな男だいっきらい!
 独りよがりで、押し付けがましくて、
 好きだ好きだってうるさいけど、自分が可愛がってほしいだけでしょう!?
 甘ったれ!自己愛の塊じゃん!」
「・・なんとでも言えよ。
 でも僕は・・美知留を愛してる。
 誰よりも・・。」
「・・・」
「いつまでも・・。」

瑠可が通う病院
「シェアハウスを出ようと思っています。」と瑠可。
「そうですか。」
「・・誰も知らない場所で、新しく生活を始めたいんです。
 落ち着いたらいずれ、海外に行こうと思っています。
 出来れば・・その時に手術を受けたいと思っています。」
「何か、焦ってるんじゃないですか?
 それにまだ、あなたを性同一性障害だと、
 診断できているわけでもありません。
 今の段階では、性別違和症候群と呼ばれる、症例にあたります。
 どうしてそんなに急ぐんですか?」
「・・・苦しいんです。
 大声で、叫びだしたいくらい苦しいんです。
 でも・・今カミングアウトすることは、全てを壊すことになるから・・。」
「全てとは、限らないんじゃないんですか?
 一番側にいる人に、ありのままの自分を認めてもらいたい。
 人間なら、誰もが願うことです。
 その切実な思いが、少しでも満たされれば、
 あなたも、敢えて出ていきたいとは、思わなくなるんじゃないのかな。」
「・・・」

帰宅したエリは、宗佑から預かった手紙に目を通す。
『美知留へ
 美知留に合えなくなって何日経つんだろう。
 電話も繋がらない今だ~こそ電話で美知留の
 声が聞けた頃を思い出す。
 一緒に暮らし始める前、会えない日は必ず電話で
 話したよね。
 1日、ミチルの声が聞けないと、気が狂いそうなくらい
 寂しくなった。今はもう数え切れないくらい美知留の
 声がきけてない。
 わかるよね。今の僕の寂しさ。
 寂しいよ、美知留。
 寂しくて仕方がないんだ。
 美知留、愛してるよ。何度でも言う。愛してる。』
『美知留へ
 僕は君を守るため、どんなことがあっても
 死なないよ。
 美知留は僕がいないと生きて
 僕も君がいなければ生きてい』
『何で君は会
 会いたいよ。君に
 君のいない生活』
『一緒に暮らした日々、君の声も笑顔も。
 君の事を思いながら、一日を暮らした。
 美知留、会いに来てほしい。』
どの手紙にも、美知留への愛の言葉がつづられていた。

するとそこに、友彦がやってくる。
「お邪魔していいかな。」
「ダメ!」
「お邪魔しまーす。」
「ダメって言ってんのに!」
「ね!今度、温泉行かない?いいとこみつけたんだけど。」
「・・・」
「何読んでんの?」
「うん?ラブレター!」
「え・・どういうこと!?」
「あのね、私モッテモテだから。
 いろんな人に貰ったラブレターがあんの。何年にもわたって!」
「本当に!?」
「フフフ。」
「ふふふ・・嘘でしょ!?」
「でもオグリン、私が外で誰と会いを語らってても、
 オグリンは文句言えないんだよ。」
「え?」
「この間、奥さんと会ってたでしょう?空港で。
 私見たよ。」
「・・・見てたの・・。
 参ったな・・
 別に、会いたくて会ってたわけじゃなくて、
 あの、夫婦っていろいろあるのよー。 
 あの、生活費の分担のこととか、町内の役員会とのこととか。
 話し合っておあかなきゃいけないことがさー。」
「・・・」

病院
宗佑のベッドの脇で電車のおもちゃで遊ぶ直也。
「もう帰った方がいいよ。」と宗佑。
「・・・」
「お母さん帰ってきたんだろ?」
「お兄ちゃんも寂しそうだから。」
「・・・」
「一人だと寂しいでしょう?」
「・・・」
宗佑は窓の外に視線をやり・・。

電車に轢かれそうになったばかりなのに、
電車のおもちゃで遊ぶ直也君・・。
でも、母親に育児放棄されて寂しさを存分に知っている彼は、
宗佑も寂しい人なのだと悟っているんですね。
直也が宗佑を変えてくれるといいのですが・・。


本屋
『そこが知りたいメイク術とプロの技』という本を手に取り、
レジに向かう美知留。
そこで、以前務めていた美容室の先輩・令奈(西原亜希)の姿に気づく。
令奈は美知留に気づくと、慌てて見ていた本を棚に戻して立ち去る。
美知留は令奈が見ていた本に気づく。
『DVってなに?』『デートDV』『性暴力』

令奈も美知留と同じ様に、DV被害者のようです。
美知留は令奈を助けるのかな。


友彦と温泉に行く計画を立てていたエリは、電話で旅館を
予約しようとするが、どこも満室で取れなかった。
「じゃあネットで調べたら?」と友彦。
「ネットかぁ!でもパソコン瑠可の部屋にしかないんだよなー。」
エリはそう呟くと、いたずらっ子のように笑い、瑠可の部屋へ。
「お邪魔しまーす。パソコン使わせてもらいます!」
パソコンを開くと、
『性転換手術とは?』というページが開いてあった。
「何これ・・。」

「どう?何かあった?」
友彦がやってくると、エリは慌ててパソコンを閉じる。
「あ・・ごめん。
 私このパソコン使い方よくわかんないや。」
そう言いながら部屋を出て行く際、テーブルから本が一冊落ちる。
タケルのバイト先
「性同一性障害?」とタケル。
「瑠可のパソコン開けたら、いきなり出てきたの。
 アクセスして、閉じ忘れてたらしくて。」
「だから?」
「・・瑠可がそうかもって感じたこと、全然、ない?」
「・・・
 俺はないよ、全然。」
「そうか。」
「エリこそ付き合い長いんだからわかるんじゃないの?」
「・・・うーん。
 考えてみたこともなかったからなー。
 いやぁ、でも多分違うね!林田さんと付き合ってるし。」
「・・・」
「うん。それに、こんないい女が側にいるのに、
 そんな目で見られたことないし。」
「なるほどね!」
「ところでさ、タケル。」
「何?」
「確かめておきたいんだけど・・ 
 タケルは、女を好きにならないんだよね?」
「・・・」
「美知留ちゃんのことはどう思ってるの?」
「友達だよ。」
「えーでも・・」
「美知留ちゃんも俺のこと友達以上には思ってないよ。」
「そうかなー。そんな風には見えないけどなー。」
「そうだよ。」
「・・・
 なんかね、タケルが、私との時はあんなだったのに、
 美知留ちゃんはOKなんだったら・・
 私的にちょっと・・ショックだなーと思ってさ。
 女としては。」
「・・・そんなことないよ。」
「そんなことないって?
 それ、どういう意味のそんなことない?
 美知留ちゃんはタイプじゃないっていう意味?
 それとも自分はゲイじゃないってこと?
 それか、あん時はたまたま、体調が悪かったとか?」
「うーん。」
「うん?」
タケルが笑い出す。つられてエリが笑う。
「笑ってごまかすな!」
メニューで叩こうとするエリを軽くかわすタケル。
「来るのわかってるよ。」
「え?何で?」
二人は楽しそうに会話を続け・・。

瑠可がシェアハウスに帰宅する。
自分の部屋に入った瑠可は、本が一冊床に落ちていることに気づき、
パソコンを見つめ、そして部屋を出ていく。

リビングには誰もいなかった。
そこへ、風呂から上がった友彦がパンツ一丁でやって来た。
「あー!ごめん!」慌ててタオルを巻きつける智彦。
「おかえりー。おビールいただきまーす。」と友彦。
「・・ねえ。」
「はい。」
「私のパソコン・・」
「え?」
「・・何でもない!」
「あ、パソコン!エリさんが、使った。ごめん。」
「・・・で?」
「なんか、使い方よくわかんないとかで、すぐ出てきた・・けど。」
「・・・」
「ごめん。やっぱ、気に、なるよね。
 人の部屋、勝手に入っちゃ、ダメだよね・・。」
そう言いながら二階に上がる智彦。
瑠可はしばしその場に立ち尽くし・・。

マグカップで水を飲む瑠可。

シェアハウスの前に自転車を置くタケル。
タケルはポストに郵便物を取りにいき、エリは先に部屋に入る。

「ただいまー。」
「おかえり。」と瑠可。
「あー、着替えちゃおっかな!」エリが部屋へいく。

「ただいまー。」とタケル。
「おかえり!」
『東京都三鷹市井の頭6-13-5
 岸本瑠可様
 興明不動産』
「瑠可・・・興明不動産って?」とタケル。
「あ・・サンキュ。」
封筒を奪い部屋に向かう瑠可。
「何なの?」
「・・引っ越そうかなーと思って。」
「引っ越す!?
 え・・え、じゃあここを出ていくってこと?」
「そうだよ。」
「どうして・・」
「バイクの為だよ。そっちの方が、練習場に通いやすいし。」
「だけど・・」
「私、もともと一人が好きなんだよ。
 こういうとこで、人に気を使って暮らすのって・・
 向いてなかったんだ。」
「・・・」
「窮屈だし、・・もう、懲り懲りなんだよ・・」
瑠可はそう言い部屋に戻る。
タケルはその場に立ち尽くし・・・。

撮影中、ぼーっとしてしまうタケル。

昼休み、考え込んでいるタケルの横に美知留が座る。
「お弁当。食べて。」
「いつもありがとう。」
「忙しいと、つい食べるの後回しになっちゃうでしょ?
 でも、ちゃんと栄養とか取っておかないと、体に毒だから。」
お弁当箱の蓋を開けたタケルは、しばし見つめ、そして蓋を閉じてしまう。
「あとで食べるよ。
 今日・・もう帰っていいよ、美知留ちゃん。」
「・・・」
「残ってても、もう仕事ないと思うし。
 先に帰ってていいよ。」
「・・・私じゃ、役に立たない?
 今日、タケル君ずっと変だよね。
 何かあるなら言って欲しい。」
「・・・瑠可が家を出ていくんだ。」
「え!?」
「福生で、一人暮らしするんだって。」
「そんな・・どうして!?」
「わからないよ、俺にも・・。」
「・・・」

シェアハウス
「はい。4時ですか?わかりました。
 荷物まとめておきます。お願いします。」
瑠可が電話を切る。
そこへ、エリがやって来た。
「瑠可。あの、ちょっといい?」
「うん。」


バケツに宗佑の手紙を入れていく二人。
「いいんだよねー、これで。」とエリ。
「うん。
 こんなもの、美知留に見せちゃいけない。」
「そうだよねー。
 でもなぁ・・。
 うーん。
 私はさ、絶対の愛とか、信じないわけよ。
 今までいろんな男と付き合ってきたじゃん。
 一時はぱーっと燃え上がっても、
 終わってしまうとなんだったんだあれって思うしさ。
 だから私は、ずっと愛してなんて言わないし。
 そんなこと相手に求めるのヤボだって思ってた。
 でも・・この手紙読んでいると・・
 なんかさ、絶対変わらない愛?みたいなのが、
 この世のどこかに存在するかもって・・思えてくるんだよね。
 不思議なことにさ。」
「バカだなーエリ。」
「バカ?やっぱそう思う?」
「自分が苦しいからって、好きだ好きだって気持ちを、
 こんな風に・・叫び散らすのって、愛だと思う?」
「・・・」
「時には、自分の気持ちを抑えて、相手の為に引けるのが、
 愛だと思うけど。
 ・・・さ、火つけよう。」
瑠可とエリは手紙に火をつけ、全て燃やしてしまう。

病院
荷物をまとめ、松葉杖を手に退院しようとする宗佑。
そこへ看護師がやって来た。
「何してるんですか。まだ退院は出来ませんよ。」
「・・・」

シェアハウス
美知留がかけ戻ってきた。
「おかえり!」笑顔で迎える瑠可とエリ。
「瑠可!ここを出ていくって、本当なの!?」と美知留。
「え!?何それ。本当に!?」とエリ。
「・・うん。もう、契約してきた。
 あさって引っ越す。」
「すごい急じゃん!どうして!?」とエリ。
「いろいろあるんだよ。」
「みんなで仲良くやってきたのに・・どうしてなの?」と美知留。
「そういうのに飽きた。
 ・・・人と合わせるのが・・面倒になったんだ。」
「私・・瑠可がいないとやっていけない・・
 心細いよ!」
「タケルがいるじゃん。
 エリもいるし、大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃないよ!」
「大丈夫になってもらわないと困るんだよ。
 あんたの面倒一生見切れないから・・。」
そう言い部屋に戻る瑠可。
美知留は悲しそうに立ち尽くし・・。

「あんたの面倒一生見切れない」
見たいけれど、見ることが出来ないという瑠可の悲しい思いが
込められたセリフでした。

『残酷な現実』【原创】2008-6-30 16:56:09

第7話

『残酷な現実』

美知留(長澤まさみ)は、瑠可(上野樹里)との関係があまり上手く
いっていないことに悩み、タケル(瑛太)に相談を持ちかけた。
美知留は、学生時代から、瑠可には決して他人を入り込ませない
壁のようなものがある、と感じていたのだという。

 
ふたりの会話を偶然聞いてしまった瑠可は、美知留の言ったことは
本当だ、とタケルに打ち明けると、いままで誰にも話したことがない
その秘密を聞いてほしい、と告げた。
以前から瑠可に心をひかれていたタケルは、瑠可の話を聞く前に、
といってその思いを伝えた。

「俺・・滅多に人を好きにならないし、
 この気持ちは揺るがないって自信がある。
 だから、何でも安心して打ち明けてほしいんだ。」
「・・・」
「俺は・・君の味方だから。」
「・・・・・
 ごめん。」
「・・・」
「タケルの気持ちには答えられない。
 私・・・」
「他に・・好きな人がいるから?」
無言で頷く瑠可。
「・・そうか。」
「ごめん。」
「・・いいよ。
 ・・・いいんだ。
 ・・・わかってた。」
瑠可が一人で歩き出す。


「瑠可!!
 ・・・話はまだ途中だろ?
 俺に・・打ち明けたいことが、なんかあるんじゃないの?」
「・・・ああ。それはもう・・。」
「・・・」
「・・美知留のことだよ。
 ほら・・私最近、すぐに苛々して、
 美知留に当たっちゃっただろ?
 美知留は私を頼ってくれるのに、
 なんか私・・すぐカっとなって。
 だから・・タケルが優しくしてやってよ。
 私の分も。」
「・・・うん。」
「好きになってやって。」
「・・俺は好きだよ、美知留ちゃん。」
「もっとだよ!もっと好きになってやって。」
「どういう意味だよ!」
「美知留は・・・寂しがりやだから・・
 誰かが支えてやんなききゃダメなんだ。
 だから・・タケルが支えてやって。」
「・・・」

二人は一緒にシェアハウスに戻っていく。
玄関の前。
「タケル。
 ・・・私達、これまでどおりだよな?」
「・・・」
「今までどおり付き合えるよな。」
「・・・うん。」
安心して微笑む瑠可。

リビングでは。エリ(水川あさみ)たちが大騒ぎしながら
マリオカートで遊んでいる。
「オグリンじゃないよ、ワリオだよ!」友彦(山崎樹範)もはしゃいでいる。
「何やってんの?」と瑠可。
「あー、お帰り!」「お帰り!」と美知留たち。
「今日さ、見に行った映画があまりにもつまんなかったから、
 アキバ行ってつい出来心で買っちゃったんだよねーオグリン!」とエリ。
「もう、ねだられちゃってさー。」と友彦。
「いいじゃん、みんなで楽しめるんだからー。
 あ!そうそうそうそう!
 今日ね、何と!福引があたったんです、ジャーン!」とエリ。
「おー、すごいじゃん。」と瑠可。
「東武動物公園の、タダ券が6枚!
 ねーねーねー!みんなで一緒に行こうよ!
 タケルも美知留ちゃんも一緒に!」
「あ・・うん・・」と美知留。
「いいんじゃない?みんなで行こうよ。
 ね、タケル。」と瑠可。
「ね・・。」
「たまにはパーっとやろう!
 このメンバーで出かけたことって今までなかったしね。」と瑠可。
「あ、そういえばそうだね。」と友彦。
「そうだね!楽しいかもね!」美知留が嬉しそうに笑う。
「あ、でも、1、2、3、4、5。
 どうする?あと一人。」とエリ。
「誰かいるだろ、そんなの。」と瑠可。
「そっか。」
「ねーねー、これやらして。」瑠可がコントローラーを借りる。
「交代ー!」エリは美知留からコントローラーを借りる。
「どうやってやんの?どうやってやんの?」
「それ、2番がアクセル。」と友彦。
「初めてなんだけど。」と瑠可。
「上手いよ!」

楽しそうにゲームをするみんなを悲しい顔で見つめるタケル。

「君の側にいようと思うなら、
 君の重荷になっちゃいけない。
 傷ついた顔を、君に見せちゃいけない。
 瑠可・・でも君も、同じ事を思ってたんだよな・・。」


モトクロス練習場
「林田さん。」瑠可が監督・林田(田中哲司)を呼び止める。
「おぉ!どうした?」。
「いやちょっと、相談したいことがあるんですけど。」

双眼鏡で何かを覗き込む宗佑(錦戸亮)。

踏み切りの音が聞こえる場所。
どこでしょう?
シェアハウスでも、瑠可の実家でもなさそうです。


朝、皆が出発の準備をしていると、瑠可が林田を連れてくる。
「あれ??監督さん・・ですよね。」とエリ。
「えー・・このたび我々、めでたく、付き合うことになりまして。」と林田。
「・・・あ!瑠可がずっと好きだった人?」と美知留。
「あー・・そうだよ。」
「えーーー。瑠可ってこういう男の人と付き合ってるイメージ
 なかったけど。意外!!」とエリ。
「なんだよー。」
「そうなんだー。いいじゃん!体育会系同志!」とエリ。
「うん!大人だしね!」と友彦。
「ずっと、バイク教わってた方、だもんね。」
美知留も嬉しそうに瑠可を見つめる。
そんな中、タケルはショックを隠せずにいた。
 
シェアハウスの面々に林田を加えた6人は、遊園地を訪れた。
タケルは、寄り添って歩く瑠可と林田の姿を見ているのが辛くなり、
目をそらす。
と、そのとき、ひと組の家族連れが目に入った。
夫や子どもと遊びにきていた白幡優子(伊藤裕子)だった。
ほどなく優子もタケルに気づいた。
一瞬、見詰め合う二人。
タケルは視線を伏せ、目を閉じる。
何事もなかったかのように、子どもに微笑みかける優子。
タケルは優子に背を向け歩き出す。
そんなタケルを美知留は心配そうに見つめ・・。

木に両手をついて目を閉じるタケル。
次の瞬間、過去の記憶がフラッシュバックする。

「タケル!タケル!」
「お姉ちゃーーん!!」

気分が悪そうに木にもたれかかるタケル。
「大丈夫?」美知留が追ってきた。
「うん・・。
 なんだろ。ちょっと・・貧血かな。」
「向こうにベンチがあるから横になった方がいいよ。」
美知留がタケルの腕を掴む。
「・・大丈夫だよ。」
「・・・」

「あれ?タケルがいない。
 美知留ちゃんもだ。」とエリ。
「ほんとだ。」と友彦。
「どうする?」
「いいんじゃない?ほっとけば。
 二人とも子どもじゃないんだし、
 案外上手くいってるかもしれないじゃん。」と瑠可。
「え!?え!?何??そういう設定ありなの!?」と友彦。
「私あれ乗りたいな!乗ろうよ一緒に。」と瑠可。
「おぉ!」

ジェットコースターに並ぶえりと友彦。
「お!すげー!
 俺大人になってからジェットコースター乗るの久し振りだよ。
 ていうか初めてかも!
 記念記念!」
友彦が携帯でエリと2ショット写真を撮り始める。
「ちょっとそんな子どもみたいにはしゃがないでよー。
 それに、不倫の証拠写真残すようなことしてどうすんの?」
「え・・不倫?
 あんまり、そんな風に思ったことなかったけど・・。」
「離婚の裁判とか調停になったとき不利だと思うけどなー。」
「そう!?」慌てて写真を削除する智彦。

売店前
「はい。お待たせ!」林田がコーヒーを買ってくる。
「ありがとうございます!」
「ま、今日は、彼氏だからな。」
「林田さん・・すみません。付き合ってる振りしてくれだなんて。」
「ま、たまにはこういう所でお前と会うのもいいかもな。
 デートみたいで!」
「何ですかそれ。」瑠可が少し寂しそうに笑う。

シェアハウス
コーヒーを入れる美知留。
2階からタケルが降りてきた。
「大丈夫!?」
「うん。」
「あ、遅いね、みんな。
 どっかで、夕ご飯でも食べてくるんだよね、きっと。」
「・・・ごめんね。
 美知留ちゃんまで、俺に付き合って帰ってくることなかったのに。」
「あ・・いいのいいの!
 私、ああいう上がったり下がったりする乗り物、苦手だし。」
笑い合う二人。
「・・・タケル君。
 もし、何か辛いこととか、悩んでることとかあるんだったら、
 言ってね。」
「美知留ちゃん・・。」
「私は、タケル君に助け出されて、みんなに助けられて、
 ここにいるんだもん。
 もし、タケル君が、困ってるなら、私も役に立ちたい。
 寂しい時は、側にいてあげたいし。」
そう言い微笑む美知留。
美知留の言葉にタケルも微笑む。
「ありがとう。
 ・・ただ、今日は本当に疲れただけなんだ。
 この所、仕事も、詰まってたし・・。」
「そっか。
 あ、コーヒー出来たね。」
「俺入れるよ。」
「いや、私入れるよ。」
そこへ、エリ、友彦、瑠可が帰ってきた。
「ただいまー!」「疲れたー!」
「みんなあの・・先に帰っちゃってごめんね。」とタケル。
「いいよいいよ!」と瑠可。
「そうだよ!
 そんなことより・・お腹減った。」と友彦。
「あれ?ご飯食べてないの?」と美知留。
「美知留抜きで外で食べたりしないよ。」と瑠可。
瑠可の言葉に美知留が嬉しそうに微笑む。
「はい、おみやげ!」とエリ。
「美知留、開けてみて。」と瑠可。
「え?」
箱を開けてみると、『おかえりMichiru』とプレートに書かれた
ケーキだった。
「・・・」
「お帰り美知留。」と瑠可。
「瑠可が、今日は美知留ちゃんの歓迎会にしようって。」とエリ。
「ごたごたしちゃってて、歓迎会やらなかったから。
 きちんとお祝いしたかったんだ。」と瑠可。
ケーキを見つめて嬉しそうの微笑む美知留。
「まあ・・とういうことなんだ。」と友彦。
「これからもヨロシクね!」とエリ。
「ありがとう。
 ・・・私ね、ずっと、ひとりになるのが怖かったの。
 ここにいていいんだよって、側にいる人に、言ってほしくて・・」
「何言ってんだよー。」瑠可が笑う。
「そうだよー。ていうか逆に、私らに愛想尽かさないでね。」とエリ。
「ドキ!ヤバイ!」と友彦。
「あ、じゃああの、コーヒー入れるね。」とタケル。
「お!出た!タケルのコーヒー!」とエリ。
「師匠!お願いします!」と友彦。

トレーにカップを並べるタケル。
その時・・
「おーい、買ってきたぞー。
 キッチンマカロニのデラックス洋食弁当6人前!」林田がやって来た。
林田の姿を無言で見つめるタケル。

「人使い荒いよなー、岸本は。
 大先輩をパシリみたいに使うなよ。」
「お疲れ様です。
 あ、コーヒー入れるから。」
瑠可はそう言うとキッチンに行き、タケルの目の前で
彼のマグカップにコーヒーを注ぐ。
「借りるね。」
そう言いそれを林田に渡してしまう。
その様子を呆然と見詰めるタケル・・・。

これはあまりにもタケルがかわいそうで・・。
瑠可はタケルに自分への思いを断ち切らせようと、
わざとこんなことをしたのでしょうか。

キッチンマカロニってどこかで聞いたと思って検索してみたら、
『ランチの女王』のお店の名前だ!


タケルの部屋
膝を抱えて考え込むタケル。
耳にはヘッドフォン。音楽を聴いているのか?

美知留の部屋
ベッドに腰掛け考え事をしていた美知留。
決心したように部屋を出ていく。

瑠可の部屋
英語のサイトを調べる瑠可。
『AESTHETIC PLASTIC SURGERY』
性転換手術について調べているのでしょうか?

瑠可の部屋の戸がノックされる。
「今、いい?瑠可。」
美知留の声に、瑠可はノートパソコンを閉じて返事をする。
「うん。
 どうした?」
「私ね、宗佑と話す。
 きっぱり、別れるって話すね。」
「・・・」
「今だったら、言える気がするんだ。」
「でも・・会って話すつもりじゃないよな?」
「・・大丈夫だよ!」
「エリか私が、電話した方がいいんじゃない?」
「ううん。一人で、大丈夫。
 何でも、人にしてもらってるようじゃダメなんだよ。
 私が、自分で。
 きとんとけじめ、つけないと。」
「そっか。」
美知留が頷く。
美知留の強い決意を知った瑠可は、
何も言わなかった。

翌朝
美知留は宗佑のマンションを見上げ・・

宗佑の携帯に美知留からの着信。
「もうすぐ帰ってくるんだね。」と宗佑。
「・・・」
「帰ってくると思ってたんだ。
 君がいる場所は・・ここしかないから。」
「・・・宗佑。
 私・・・宗佑と別れようと思う。」
「・・・」
「別れたいの。」
「・・・連中に洗脳された?」
「連中って・・」
「シェアハウスの連中のことだよ。
 やつらはそりゃ、色々いい事を言うだろうな。
 でも所詮は他人だから、
 君を最後には見捨てる連中だ。」
「宗佑は・・違うの?」
「僕は・・死ぬまで君を見捨てない。」
「・・・私ね、宗佑といると・・自分がなくなっちゃう。
 宗佑のことで、いっぱいいっぱいになって・・
 自分のことを考えられなくなるの。」
「それでいいんじゃない?
 僕も、君の事で頭がいっぱいだよ。」
「それでいいと思ったこともある。
 でも・・・違うと思う。
 私はもっと、自分の頭で考えて、
 自分の人生を生きたいの。」
「言ってることわかんないよ。
 こんなに君を大切にしているのに。」
「宗佑は・・私を殴るよね。
 どうしてなの?」
「・・・」
「私を自分の思い通りにしたいから?
 私より・・自分が大事だからなんじゃないの?」
「違うよ。
 ・・・君と一つになりたいんだ。」
「ごめん。
 私もう・・・宗佑が言ってること、わからない。」
「・・・」
「ごめんね。」
「ちょっと待って!」
「さようなら。」
美知留はそう言い電話を切ると、宗佑の住むマンションに背を向けて
歩き出す。

モトクロス練習場の更衣室に人だかりが出来ている。
「どうした?何集ってるんだ?」と林田。
瑠可もやって来ると、みんなが瑠可を避けるように道を開ける。
そこには、あの怪文書が貼り付けられていた。

『岸本瑠可は
 女の体の中に男の心が入った
 バケモノです。
 男のようないやらしい目で
 親しい女のことを見ている、
 歪んだ精神の持ち主です。
 嘘だと思うなら
 本人に確かめて下さい。』

「お前・・なんだこれ・・。」と林田。
怪文書を剥ぎ取る瑠可。
「岸本!何なんだ・・これは・・。」
「知りませんよ。」
「誰がやったか、心当たりはあるのか?」
「多分、美知留の元カレです。
 そいつ最低のDV野郎なんですよ。
 私が、美知留との仲を裂いたって、
 逆恨みでもしてるんじゃないんですか?」
「・・そうか。」
林田に笑顔を見せてロッカールームに入ろうとする瑠可。
「じゃあ、それは全部、嘘・・なんだな。」と林田。
「・・・
 そんなこと、信じるんですか?」
「・・・いや。信じないけど・・」
瑠可はもう1度微笑むと、ロッカールームの中へ。
「おい!岸本!」

服を着たままシャワーを頭から浴び、瑠可は号泣する。

美知留は美容院の先輩・令奈(西原亜希)と偶然会う。
一礼する美知留。
「男と暮らしてるんでしょう?
 いいよね、それで生活出来んなら。」
すれ違いざまそう言い捨てる令奈に、美知留は何も言うことが出来ず・・。

空港
エリが友彦に声をかける。
「小倉さん!」
「うわ、誰かと思った!」
「一応職場では敬語で話そうと思いまして。」
「ああ。」友彦が微笑む。
「明日、コンサートのチケットが手に入ったんですけど、
 どうします?サザンですけど。」
「・・あ、ごめん。明日、残業の予定入っちゃってて・・。」
「そう。」

「エリー。」同僚が声をかける。
「その件は了解。」
エリはそう言い同僚の元へ。

オグリンの残業というのは怪しいですね。
エリに同僚の友達がいたことにびっくり。
第一話で同僚に無視されたように思っていたので

公園
ブランコに座りぼーっと考え込む宗佑。
そこへ、以前ヤキソバパンをあげた少年・直也(澁谷武尊)がやって来た。
「今日はパンないの?」
「ないよ。」
「・・・」
「お母さんは?」
「まだ帰って来ない。」
「いつからいないの?」
「覚えてない。」
「・・・」

宗佑は直也と共に彼の家に行ってみる。
散かった部屋を見渡す宗佑。
テーブルにはテーブルが見えないほど物が置かれていて、
流しには食器やごみが溢れ、部屋中ものが散乱している。
「うちにあるもの全部食べちゃった。」
「・・そっか。」
宗佑は直也に微笑み・・。

宗佑の部屋
「いただきまーす!」
宗佑が作ったカレーを美味しそうに食べる直也。
「美味しい?」
「うん!」
その言葉に微笑む宗佑。
「お兄ちゃんのお母さんは?」
「いないよ。ずーっと前から。」
「結婚してるの?」
「してない。
 でも、彼女はいた。」
「いなくなっちゃったの?」
「・・うん。」
「寂しい?」
「・・寂しくないよ。」
「何で?」
「彼女は又、戻ってくるから。」

部屋でコーヒーを飲む美知留。

バイト先のバーで氷を砕きながら瑠可との公園での会話を思い起こす
タケル。

タケルが家に戻ってきた。
「ただいまー。」リビングを覗くと誰もいない。
そこへ、瑠可が戻ってきた。
瑠可はタケルを無視し、部屋の中へ。
「・・・瑠可。
 何があったの?
 この前話してくれたこと・・あれで全部じゃないよな?」

大きな声で瑠可に話しかけるタケル。
その声は部屋にいる美知留にも聞こえていた。

「何か、悩んでるなら言って欲しい。
 俺には、何でも言えるって、そう言ってくれたじゃん。
 俺は・・君の友達だから。
 そうだろ?瑠可!」

瑠可はドアにカバンを投げつける。
「うっせーんだよ。
 人の悩みにいちいち首突っ込むんじゃねーよ!
 友達友達って・・
 人にはな、死んだって言いたくないことがあるんだよ!」

瑠可の言葉に、タケルは言葉を失い、自分の部屋に戻っていく。

美知留も心配そうな表情を浮かべ・・。

部屋に戻ったタケルは、ベッドにうつぶせに横になり頭を抱え・・。

「5、6、7、8、9、10!」
幼いタケルが目を開ける。
「タケル!タケル!」
広い野原を優子はタケルに見付からないように走り抜ける。
「お姉ちゃん?お姉ちゃん?」
優子を探すタケル。
「タケル?こっち!タケル!こっちこっち!」
タケルの背後に立つ優子。
「あ!お姉ちゃん!」嬉しそうに微笑むタケル。
「タケル!」優子がタケルを抱き上げる。
「お姉ちゃんが、いいことしてあげよっか。」
「わーい!」
「お父さんには、秘密だよ。」

タケルがそっと目を開く。朝になっていた。

静かに1階に降りていくと、ダイニングテーブルで美知留が一人
泣いていた。
タケルは美知留には声をかけず、静かに部屋へと戻っていく。

いつものタケルなら、きっと美知留に「どうしたの?」って声をかけていたでしょう。
瑠可の言葉が効いているのか、
それとも、泣いている美知留とは今は関わりたくなかったのか。
美知留も泣くなら自分の部屋で泣けばいいのに・・。


朝食を取る5人。
タケルと瑠可の様子がいつもと違うことを察するエリと友彦。
瑠可が食器を下げる。
「もういいの?」とタケル。
「どうしたの?」とエリ。
「瑠可・・何かあったなら、言った方がいいよ。
 みんなで考えてあげられることかもしれないし。」と美知留。
「・・・今スランプなんだ。
 練習でいいタイムが出せない。」と瑠可。
「本当に?」と美知留。
「そうだよ。」
「今までも、何回かあったもんね。
 大丈夫だよ、また乗り越えられるから。」とエリ。
「・・・」
「あ、こんな時間だ。エリさん行かないとこれ。」と友彦。
「うん。ご馳走様でした!」
二人が仕事に出かけていく。
「いってらっしゃい!」

「私練習まで時間あるから寝るわ。」
「瑠可・・。」
「昨日練習がハードだったから疲れて・・。」
瑠可はクッションを抱えてソファーに横になると、
顔を腕で覆い目を閉じる。

「・・・私、宗佑と別れたよ。」
「・・・」瑠可は身動きせずに聞いている。
「ちゃんと、さよならって言えたんだ。」とタケル。
「言えた。ちゃんと、別れられたよ。」
「今度こそ諦めてくれるといいね。」
「・・・」
「瑠可。」タケルが呼ぶ。
「・・・」
 「聞いてる?」
「ああ。聞こえた。
 ・・良かったんじゃない?
 ・・そろそろ行くわ。」
瑠可が出ていくのを、タケルと美知留が悲しそうに見つめる。

「・・・洗いものしちゃおっかな。」と美知留。
「俺も手伝うよ。」
席を立ったタケルは、ソファーに瑠可の携帯が忘れられていることに
気づくが、瑠可を追いかけようとはしなかった。
「・・・昨日の夜、泣いてた?」
「・・・」
「彼のこと思い出して?」
「・・・
 何でもわかっちゃうんだね、タケル君は。
 ・・宗佑のことを考えると・・絶対に戻れない、綺麗な、
 懐かしい場所を思い出しているみたいに・・悲しくなる。
 変だよね。本当は・・地獄だったのに。」
「・・・わかるよ。」
「・・わかるの?」
「俺にも、そういう経験あるから。」
「そういうって?」
「・・・大好きだった人を・・・あとで・・大嫌いになったことがある。」
「・・・」
「大丈夫だよ。
 きっと、少しずつ変わっていく。
 うん。
 好きな人も出来て、友達も出来て、紛れていく。
 心に傷が残っても・・自分でなだめられるくらい・・
 小さくなるから。」
そう言い微笑むタケル。
美知留はそんなタケルの肩に寄り添い・・
「好きになっても・・・いいかな。」
「・・・」
「タケル君のこと・・好きになっても・・いいのかな・・。」

携帯を取りに帰った瑠可が二人の背中を見つめ・・。

戸惑いながらも美知留に手を伸ばし、美知留の肩に手を置くタケル。
タケルの胸で目を閉じる美知留。

玄関を出た瑠可は、少しの間ドアにもたれかかり、
そして歩き出す。

瑠可が倒してしまった植木の音に、美知留とタケルは驚いて
振り返る。

自転車を漕ぎ出す瑠可。

タケルは誰もいないことにほっとしながらも、
ソファーにあった携帯が無くなっていることに気づき・・。

「人と人の絆は、本当に儚くて、
 愛は、淡雪みたいに壊れやすい。
 瑠可。
 あの時、私があなたといられる時間。
 私の、幸せの残り時間は・・
 思ったよりずっと少なかった。」


空港
エリはカフェで妻・栄子(川村早織梨)と楽しそうに話す
友彦の姿に複雑な表情を浮かべ、
それでもそんな気持ちを振り切るように、振り返らずに歩き出す。

外に出た美知留は、玄関の戸にもたれながら風に当たる。

台所で一人考え込むタケル。

踏み切り沿いの道を直也と一緒に歩く宗佑。
直也が踏み切りの向こうに母親(ひがし由貴)の姿を見つける。
母親は男と一緒に楽しそうに歩いていた。
「ママ!!」直也が踏み切りを潜り抜けて走っていく。
「危ない!!」
買物袋を落とし、直也を追いかける宗佑。
転んだ直也を抱き上げる。そこへ電車が・・。

植木鉢が倒れていることに気づいた美知留は、怯えながら辺りを見渡し・・。

『命がけの逃避行』【原创】2008-6-30 16:54:59

第6話

『命がけの逃避行』

美知留(長澤まさみ)は、宗佑(錦戸亮)のそばにいてあげたい、
と瑠可(上野樹里)に訴える。
美知留は、自分自身も弱い人間だから宗佑の弱さがわかる、と
瑠可にいうと、宗佑のマンションへと急いだ。
瑠可は、そんな美知留の言葉に傷つき、激しく動揺し、
心配してくれたタケル(瑛太)の手を跳ね除けてしまう。
「・・・しょうがないや、もう。
 帰るやつはとっとと帰ればいいんだ。
 さあ飲も飲も!」瑠可が歩き出す。
「ほっといていいの?危なくない?」とエリ(水川あさみ)。
「・・・好きで帰ったんだから、どうしようもないだろ。」

電話で宗佑から、死ぬことにした、と告げられた美知留は、
震える手を押さえながらマンションの鍵を開けた。
「宗佑!!」
ソファーに座る宗佑に駆け寄る美知留。
すると宗佑は、何事もなかったように、
「お帰り。」と美知留に微笑む。
「携帯出して。」と宗佑。
「・・・」
「携帯。」
美知留は言われたとおり携帯を差し出す。
「又新しいの買うから。」そう言い立ち去る宗佑。
キッチンには、包丁が突き刺さったリンゴが置いてあり・・。

美知留の卒業アルバムの瑠可が載っているページが燃やされる。
「美知留。
 君は、僕のものだ。
 ・・・二人で生きていこう。
 誰にも、僕らの邪魔はさせない。」
「・・・」


その夜、タケルやエリを誘って酒を飲みにいった瑠可は、
泥酔してしまい、タケルたちに抱きかかえられるようにして家に戻る。
「もう1軒行こうぜ!」はしゃぐ瑠可。
「もうすぐ家だよ。」とタケル。
「あーじゃあ家で飲もう!
 タケルバーテンなんだからー。
 酒出せ酒!」
「わかったよ。」タケルも楽しそう。
「瑠可ってさ、いつもぴしーっとしてるのに、 
 飲むとたまーにこうなっちゃうんだよね。」とエリ。
「子どもみたいに?」タケルが笑う。

「あるー日♪森の中♪」歌う瑠可。
「あれ?何で電気ついてんの?」とタケル。
「あ、ほんとだ。」とエリ。

シェアハウスには、妻の元に戻ったはずの友彦(山崎樹範)の姿があった。
「・・・オグリン!!」
「・・・やあ、お帰り!」

「で、結局どうするんですか?」タケルが聞く。
「・・うん。あの・・また、暫く、ここに置いてもらえると、
 助かるんだけどね。」と友彦。
「奥さんとは別れんの?」と瑠可。
「あ・・あの、それは・・まだ。」
複雑な表情を浮かべるエリ。
「ていうか・・奥さんと話し合って、暫く、試験的に別居しようって
 ことになってさ・・。」
「ずるいな!」と瑠可。
「・・・」
「寂しいからって今エリを頼ってさ。
 奥さんがおいでおいでしたら、また尻尾振って戻っちゃうんだろ?
 覚悟もなしにここに住むのかよ。
 エリの気持ちちょっとは考えろよ!」友彦に掴みかかる瑠可。
「瑠可!いいよ。」エリが止める。
「そりゃ俺だって・・先のことは・・
 自分の気持ちも含めて、・・もうほんとどうなのか・・。」
「いいんじゃないの?
 私はいいよ、別に。
 いたいだけ、ここにいればいいじゃん。」とエリ。
「エリ?」と瑠可。
「・・・いいの?」と友彦。
「先のことがわかんないのって、人間関係の常識じゃん。
 まあ元々おぐりんとは、友達に毛が生えたようなもんだし。
 いいよ、このまんまで。
 まあお互い、いないよりいた方がちょっと嬉しいって感じで続いてれば。」
「・・ありがとう。」
「・・いいよね?」エリが瑠可に聞く。
「エリが・・そこまで言うんだったら、私はいいけど。」
「いやー!ありがとう!!」
「それより・・心配なのは美知留ちゃんだよね。」とタケル。
「そうだよ。本当にいいの?このままほっといて。」とエリ。
「いいんだよ。
 ・・・いいんだ、あいつのことは。」瑠可は悲しそうにそう呟く。

朝、歯ブラシに手を伸ばした瑠可は、美知留の歯ブラシに手を止め・・。

「美知留。
 あの日の、あの再会がなければ、
 私はあなたのいない人生を生きているはずだった。
 あなたの恋や、悩みを知って苦しむこともなかった。
 元に戻せばいいだけ。
 それまでと同じ様に、ずっと一人だったと思えばいい。
 簡単だよ。
 だって私は、そうやって生きてきたんだから。」


美知留の部屋の前で悲しそうに微笑む瑠可。

トランプで遊ぶ4人。
みんなにコーヒーを入れていたタケルは、美知留のマグカップを見つめ・・。
今日のエリの衣装はチャイナドレス。
「あ・・そういえばさ。
 美知留ちゃん・・どうしてるんだろうね。」と友彦。
「音沙汰ないよね。
 携帯にかけてみたの?瑠可。」とエリ。
「いや。」
「俺はかけてみたけど。」とタケル。
「それで?」とエリ。
「繋がらなかった。
 もう番号も使われてない。」
「・・・
 エリ、手札、見えてるんだけど。
 さっさと始めようよ。
 そんなこと考えてもしょうがないじゃん。」
そう言う瑠可を心配そうに見つめるタケル。

「瑠可、どうしてだろう。
 君の気持ちが、俺にはいつも、
 手に取るようにわかってしまう。」


タケルは、美知留のことを心配して、彼女が働いていた美容室を訪れる。
が、美知留はすでに店を辞めていた。
「無断欠勤したり、急に早く帰ったりするから、
 こっちも迷惑してたんですよね。
 辞めてもらって助かったって感じ。」と令奈(西原亜希)。
「そうですか・・。」

美容室で宗佑のマンションの住所を聞いたタケルは、
思い切ってそこを訪ねた。
ドアチャイムを押しても返事はなかったが、玄関のドアには鍵が
かかっていなかった。
不審を抱き、ドアを開けるタケル。
美知留は、部屋の中に洗濯物を干していた。眼帯をつけている。
「・・・美知留ちゃん?」
ゆっくりと顔を上げた美知留は、タケルの姿に急に怯え出し・・。

喫茶店
怯えたように辺りを見渡す美知留。
「大丈夫だよ。彼は勤務中だから来られない。
 さっき確認したから。」とタケル。
「・・・」
「美容室、辞めたんだね。」
「・・・」
「携帯は?」
美知留がカバンから携帯を取り出す。
「変えたんだ。彼に言われて。
 毎日、何してるの?」
「ご飯・・作ったり・・洗濯したり、アイロンかけたり、
 テレビ見たり・・。
 2時間置きに、彼から家電に電話が入るの。
 ・・・あ。もう帰らないと。」美知留が立ち上がる。
「待って!
 目・・どうしたの?」
「・・・」
「座って。
 ・・ごめんね。」
タケルが美知留の眼帯を外すと、そこには殴られた痣があった。
「・・・何でそんなことを!」
「夕ご飯の買物の時間が掛かって、
 彼が帰ってくる前に、家に帰れなかったの。
 私が悪いの、うっかりしてたんだから。」
「美知留ちゃんが選んで、彼の元に帰ったのなら
 それでいいと思ってた。
 ・・・でもこんな生活まともじゃない!早く抜け出さなきゃ!」
「でも・・・これが一番いいんだと思うんだ。
 これが一番・・誰にも迷惑が掛からない。」
「そんなことはない!
 絶対にそんなことはないよ!」
「・・・」

その時、美知留の電話が鳴る。
「はい。」
「今どこ?」宗佑の声。
「・・・」
「何でうちにいないの?
 家電に掛けたんだけど。」
「・・・ああ・・ゴミ出すのに時間掛かっちゃって。」
「早くうちに戻ってるんだよ。
 それと、夕ご飯の買物はしなくていいよ。
 僕が何か買って帰るから。」
「・・わかった。」
その時宗佑は家にいたのだ。
美知留の嘘に、宗佑は外に出かけていく。

「・・・美知留ちゃん。逃げよう、ここから。」
「・・・」
「もう充分耐えたんだ。
 彼は変わらない。わかってるよね!」
「でも・・」
「君がいなくなって、例え彼が傷ついても、彼が悪いんだよ!
 君をこんなに痛めつけた、彼が悪い!」
「・・・」
「君は悪くない。」
「・・・」美知留が顔を上げる。
「シェアハウスに戻ろう。」
「・・・」
「みんな心配してる。
 瑠可も・・待ってるよ。」
タケルの温かい言葉に美知留は涙をこぼし・・。

店を出た二人。
タケルが美知留に頷くと、美知留も頷き、そして歩き出す。

横断歩道を渡っていたとき、タケルは宗佑の姿に気がつき、
慌てて美知留の手を引き走り出す。
「どうしたの!?」驚く美知留。
「とにかく走って!」

宗佑が振り返る。

停まっていたタクシーに乗り込む二人。
「早く!!」タケルが運転手に言う。
「あ・・はい。」
「早く出て下さい!」
「美知留!!」宗佑がタクシーの窓を叩く。
「早く!早く出して下さい!」
タクシーを追いかける宗佑。だがその差は広がっていき・・。
タケルのバイト先
「今日は休みだから、今夜はここに泊まって。
 毛布もあるし、一晩ぐらいなら何とかなると思う。」とタケル。
「・・・ありがとう。」
「すぐに、シェアハウスに戻るのは、危ないからね。」
「・・・」
「大丈夫。ちゃんと美知留ちゃんを守る方法はあるはずだから。」
「・・・」
「明日病院に行こう。
 医者に診断書を貰って、虐待を受けたってことを証明出来れば、
 彼を遠ざける、立派な理由になるから。」
「タケル君・・」
「うん?」
「このこと・・まだ瑠可には言わないで。 
 心配させたくないの。」
「・・わかった。」

カウンセリングを受ける瑠可
「ご家族にも話をされたことはありませんか?」
「・・・父は、私が普通に女として結婚して、幸せになるのを
 望んでいるんです。
 それは言われなくてもわかります。
 本当のことを言ったら、傷つくと思う・・絶対に。」
「でもその分、あなたの中に、苦しみが溜まっていきますよね。
 誰か一人でも、打ち明けられる人がいれば。
 ご家族でなくても、友人でもいいんです。
 本当のあなたのことを知っても、驚かず、受け止めてくれる人が
 いたら、話してみるのもいいかもしれませんね。」

シェアハウス
DVについて調べるタケル。
そこへ、家の電話が鳴る。
「はい、もしもーし。」
「・・・」
「もしもーし。」
「・・・」
「どなたですか?」
電話の向こうで「ママー。」という声が聞こえてくる。
「・・・姉さん。」
電話をかけて来たのは優子(伊藤裕子)だった。
タケルは急いで電話を切る。

瑠可が帰って来た。
「お帰り・・」動揺を抑えようとするタケル。
「ただいま。」
「・・コーヒー入れようか。」
「うん・・。」
コーヒーを入れるタケルの背中を見つめる瑠可。
「・・タケル。」
「うん?」
「・・やっぱいいや。ごめん。」
「・・・」

翌日、タケルは美知留を医者に連れていき診察してもらう。

タケルが一人でシェアハウスに戻ると、宗佑が姿を現す。
「美知留どこですか?」
「・・・ここにはいませんよ。」
「どこに美知留を隠した!」
「・・・あなたは彼女に暴力を振るった。
 彼女のことを監視して、家に縛り付けた。
 それは全て、法律に違反する行為です。
 もしこれ以上あなたが、彼女に近づいて何か強要したら、
 警察呼びますよ。」
「・・・」
「あなたの勤め先にも、訴えて出ます。
 彼女を絶対に渡しません。
 ・・・帰って下さい。」
宗佑が帰っていく。

タケルはDVのことをきちんと調べたんですね。
美知留を探す宗佑にも迫力がありましたが、タケルも負けていなかった!


タケルの店
眼帯をはずし、鏡を見つめる美知留。
店の準備をしながらタケルが美知留を気遣う。
「・・・タケル君。」
「うん?」
「私も手伝うよ。」
「だいぶ元気になったね。
 痣も・・目立たなくなったし。」
「そう?」
「うん。
 ・・・シェアハウスに戻ろうか。」
「え・・・」
「みんなもきっと喜ぶよ。」

シェアハウス
「ただいま。」とタケル。
「おかえりー。」
「・・・あのさ、みんなこっち見てほしいんだけど。
 帰って来たの、俺一人じゃないんだよね。
 美知留ちゃん。」
タケルに呼ばれて美知留はリビングへ。
複雑な表情を浮かべる瑠可。
「美知留ちゃん!」とエリ。
「帰ってきたの!」と友彦。
瑠可は美知留を見ようとしない。瑠可の様子を気にする美知留。
「美知留ちゃんの美容室に、住所聞いて、行ってみたんだ。
 そしたら・・四六時中行動を見張られて、家から出してもらえなくて、
 酷いことになってた。
 もう見てられなくてさ。
 ちょっと強引だったけど、連れ出してきた。」
「全然強引じゃないよ。当然だよ。よくやった!タケル。」とエリ。
「うん!あ・・でも、ここも危ないかも。
 ほら、彼、ここの場所知ってるし。
 この前みたく、美知留ちゃん連れ戻しに来るかも。」と友彦。
「その時はみんなで、美知留ちゃん守ればいいよ!」とタケル。
「そうだね。美知留ちゃん一人じゃ心細いもん。
 ヤツが来たら私らで撃退しちゃえばいいんだよ!」とエリ。
「そうだな。なんとかなるな!」と友彦。
「・・・瑠可。」美知留が声をかける。
「・・・」瑠可は顔を上げようとしない。
「瑠可?いいよな?」とタケル。
「・・・うん。まあいいけど。」
「ありがとう・・。
 みなさん、また・・お世話になります。」
「もう!そんなしおらしいこと言っちゃって!」とエリ。
「そうだよー。
 せっかくだからさ、再会を祝してワイン開けようよ!」と友彦。
「おーいいね!この間デパ地下で買ったやつ、開けよう!」とエリ。
「そうだね。飲もうか!
 美知留ちゃん座って。」とタケル。
美知留が瑠可の隣に座る。
「・・・私、先寝るわ。」瑠可が席を立つ。
「え!?」とエリ。
「明日早いんだ。お先に。」
「・・・」

部屋に戻った瑠可はとても辛そうで・・。


瑠可が一番最後に起きてきた。
「おはよう・・瑠可。」と美知留。
「おはよう。」
「今日は・・バイトあるの?」
「今日は、ジムで自主練。
 ・・・私、朝メシパス!」
「え!?コーヒーだけでも飲んでったら?」とタケル。
「行ってきます!」
「・・私も行ってきます!ご馳走さま。」エリが瑠可を追う。

「瑠可!」
「お先に。」自転車で先に行こうとする瑠可。
「ちょっと待って!駅まで話しながら行こう!」
「・・・」
「ほら!降りて!」
「わかったよ。」
「・・・ねー、何で怒ってるの?」
「別に怒ってなんかないよ。」
「優柔不断が嫌なわけ?美知留ちゃんの。
 男とくっついたり離れたりっていう。」
「だから別に。」
「私はわかるけどねー。
 人間って、白と黒だけじゃないから。
 しょうもない男でもカワイイとこあったりするし。」
「・・・エリ、またおぐりん部屋に泊めてやってんの?」
「まあ・・時々はね。」
「わかんないんだよねー。あんたのそういう緩さが。
 いついなくなるかわからないのに、気許して。
 あとで辛くなるのは自分じゃん?
 そういうの怖くないの?」
「私はそれ程ヤワじゃないよ。
 それ程おぐりんに入れ込んでないし。」
「そう・・。」
「そっかー。だから美知留ちゃんに気を許さないんだ、瑠可。」
「え?」
「瑠可って、ほんっと美知留ちゃんのことが好きなんだねー。」
「・・・」

公園(5月10日土曜日11:40)
宗佑は美知留の携帯に電話をしてみるが、着信音が鳴るだけ。
ベンチに座り、袋から菓子パンを取り出す宗佑。
公園で遊んでいた少年・樋口直也(澁谷武尊)が寄ってきた。
「お母さんまた出かけてんの?」
宗佑の言葉に直也が頷く。
「パン食べる?」
少年がまた頷く。
宗佑はヤキソバパンをちぎって直也に渡し、
彼が美味しそうに食べるのを笑顔で見つめる。

こういう優しさを持っている人なんですよね。

バイト中の瑠可の携帯が鳴る。タケルからだ。
「今、森林公園の側にいるんだけど、自転車が急に壊れちゃってさ。
 修理に来てくんないかな。」
「何で?何で私がそんなとこまで。」
「修理屋まで持ってけないんだよ、遠くて。
 来てくれたら美味しいもんご馳走するから。」
「・・気味悪いなー。」

工具セットを手に公園を訪れる瑠可。
「瑠可!こっちこっち!」
タケルは、美知留と一緒に待っていた。
「なんだこれ。」
タケルの自転車とは別に、二人乗り用の自転車もある。
「あのさー、このブレーキがキコキコいうから、
 ちょっと油差してほしいんだよねー。」とタケル。
「ごめんね、わざわざ。」と美知留。
「二人して何やってんだよー。
 てか何だ?この自転車。」
「サイクリングだよ、ねー!こんな、天気もいいし。」とタケル。
「一応点検しましたけど。」
工具を片づけ始める瑠可。
「あ!あのねー、この、タイヤのすべりが、悪いような気が
 すんだよねー。あ、ちょっと、乗って、確かめてもらえないかな?」
タケルに言われて瑠可は二人乗り用自転車に乗ってみる。
タケルはすかさず美知留に早く後ろに乗れと合図。
美知留が慌てて後ろに乗る。
「普通に動くじゃん。」と瑠可。
「あ、ほんとだ。よし!出発進行!!」
タケルが二人の乗った自転車を押し、美知留がペダルを踏み込む。
「ちょっとちょっと!何やってんだよ。何だよこれ!」
足をペダルから離す瑠可。
二人の自転車をタケルが自分の自転車で追う。
「岸本選手!追いつかれました!」とタケル。
「は?」
「ぐんぐん差を開けられます!」
「チックショー!テメーなんかに負けてたまるかーーっ!」
瑠可の後ろで美知留が楽しそうに笑う。
「マジで抜かすよ!マジで抜かす!マジで抜かすーー!!」
「おしりペンペン!」
「待てよタケルーーっ!!」

ベンチに座ってお弁当を食べる三人。
「美味しいもんってこれかよ。サンドイッチ!」と瑠可。
「美味しいでしょう?
 青空の下で、最高でしょう!」とタケル。
「美味しいな、私は。懐かしいし。
 ね、学校抜け出して、よく公園でお昼食べたよね。二人で。」と美知留。
「そうだね。
 でも・・学校嫌いだったなー。
 制服も・・・全部!」
「いつもジャージだったよね、瑠可。」
「スカートなんか履いてられるかよ。」
「・・・瑠可。ごめんね。」
「何で謝んだよ。」
「私のこと・・見てると苛々するんでしょ?
 どっちつかずで、ふらふらして。」
「そんなことない!
 そんなことないよ。」
瑠可の言葉に美知留は嬉しそうに微笑む。

「美知留・・・知ってる?
 私があなたから目をそらしてしまうのは、
 いつまでも見続けていたいから。
 あなたに優しく出来ないのは・・
 あなたを失うのが怖いから。
 この穏やかな時間がいつまでも続くといい。
 出来るなら・・いつまでも。」


帰り道
「でさ、正直どうなの?彼と、別れられそう?」と瑠可。
「・・・宗佑といるとね、自分がどんどん無くなっていく
 感じがしたの。
 いつも自分より、宗佑の気持ちを優先してきた。
 そうするとね、自分が今、何を感じているのか、
 何が好きで、何が嫌いか、
 本当は何がしたいのか、
 そういうことが、わからなくなっていくの。
 そうやって、大抵のことには慣れちゃうの。
 でも・・・最後まで嫌だったことがある。」
「何?」とタケル。
「彼が・・・瑠可のことを悪く言うこと。」
「へー。何て言うんだ?」と瑠可。
「・・あんなヤツ・・女じゃないとか。」
「・・・」
瑠可の顔色が変わる。
心配そうに瑠可を見つめていたタケルが笑い出す。
「いや・・ま、それは言われてもしょうがないよな!ハハハ。」
「おい、どっちの味方だよー。」と瑠可。
「じゃーねー!」
「ちょっと待てよー。」

夜、塾から帰ってきた瑠可の弟・省吾(長島弘宜)が男とぶつかる。
それは・・宗佑だった。
岸本家を見つめていた宗佑は・・。

岸本家
「あら!いらっしゃい。」と瑠可の母・陽子(朝加真由美)。
「はい。母の日。いつもありがとう。」
瑠可がカーネーションを渡す。
「あらー!ありがとう!」

瑠可が弟と話している時、陽子は修治(平田満)と部屋の外で話をする。

「何あれ。」と瑠可。
「うちのポストに、変な紙が入ってたんだよ。」と省吾。
「紙?」
「二人とも俺に隠そうとするんだけど、俺、見ちゃったんだよね。
 ポストの下にも、1枚、落ちてたから。
 ・・・見る?」
「うん。」
省吾が紙を渡す。
『あなたの娘、岸本瑠可は
 女の体の中に男の心が入った
 バケモノです。
 男のようにいやらしい目で親しい女のことを見ている、
 歪んだ精神の持ち主です。
 嘘だと思うなら本人に確かめてください。』

「・・・」
「世の中変なヤツがいるよね。
 やっぱ、優勝とかすると、恨み、買うのかな。」と省吾。
「・・・うん。」

廊下で話す両親。
「お父さんから瑠可に聞いてみて。」
「うん・・」

「お父さん。」瑠可が声をかける。
「あ?」
「いい?」
「ああ、いいよ。」
二人が部屋に戻る。
「なんか、変な手紙が来てたんだって?
 省吾に見せてもらった。」
「省吾お前・・」
父の言葉に慌てて部屋を逃げ出す省吾。
「・・・瑠可。あなた・・そういうこと書かれる覚えあるの?」
母親の、父親の複雑な表情。
「・・ああ。女子で、抜群の記録で優勝したから、
 恨まれてるんじゃないかな。
 女同士の嫉妬って、すごいからさ。」
「ああ・・」と陽子。
「そういうことか!」と修治。
「もしかして、ちょっと本気にした?
 私男っぽいからね。」
「そんなことないよ。」と修治。
「お母さんいつも言ってるじゃない。
 あなた、普段から言葉遣い乱暴すぎるのよ。
 そういうこともね、人様の恨みを買うのよ。」
「はいはい、わかりました。」
瑠可はそう言いながら手紙を丸めてゴミ箱に捨てると、
父の背中を見つめ・・・。

ため息をつきながら家に帰る瑠可。

シェアハウス
ドアの音に驚いて振り返る美知留。
「あ・・お帰り!」
「ただいま!」と瑠可。
「コーヒー入れよっか。
 あ!DVD一緒に見ない?
 今日、駅前で借りてきたんだ。会員登録して。」
「・・・ごめん。
 今日は、疲れてるんだ。」
「あ・・そう。」
「おやすみ!」
瑠可は部屋に行ってしまう。

リビングで一人ぼっちの美知留。
そして、自分の部屋で一人ぼっちの瑠可。
同じ屋根の下に住んでいても、遠い存在の二人・・。


「ただいまー。」タケルが帰って来た。
「・・・」
「美知留ちゃん?」
美知留が涙を拭う。
「ごめんね。
 お茶・・でも入れようか。コーヒーがいい?」
「・・・どうしたの?」
「・・・わからない。
 自分でも・・よくわからないの。
 ただ・・なんとなく寂しくて・・。
 私・・・やっぱりここにいない方がいいんじゃないのかな。」
「何で?」
「瑠可に・・許されてないような気がする。」

部屋から出てきた瑠可は二人の話声に気づく。

「そんなことないよ。
 もし美知留ちゃんがここ出てったりしたら、瑠可悲しむよ。
 すごく悲しむ。」とタケル。
「タケル君は・・瑠可のことがよくわかるんだね。」
「・・・」
「私は・・・時々瑠可がわからなくなる。
 時々・・壁を感じるの。」
「壁?」
「瑠可とは、ずっと昔からの友達だし、大事にしてくれてる。
 でも・・瑠可の心のどこかに、壁があって・・
 その中には、踏み込めないの。」
「・・・」
「ごめんね・・よく、わかんないよね。
 ごめん・・おやすみ。」
美知留はそう言い自分の部屋へ。

タケルが瑠可に気づく。
「・・・聞いてた?」
「ちょっと散歩行ってくる。」瑠可が出ていく。

公園
ブランコに座り考え込む瑠可。
そこへタケルがやって来た。
何も言わずに隣りのブランコに座り、そして楽しそうにブランコを
漕ぎ出す。
瑠可に笑いかけながらブランコに揺れるタケル。
つられて瑠可も微笑む。
「・・・タケル。」
タケルがブランコを止める。
「美知留が言ってたこと本当なんだ。
 私は・・・心の中に壁を作って、
 そん中に人を入れない。
 ・・・何でかってさ・・
 本当の自分知られて、嫌われるのが怖いからなんだ。
 私・・今まで・・人に隠してきたことがある。
 ・・・誰にも言えない秘密がある。
 でも・・タケルには聞いて欲しい。
 聞いてくれる?」
真剣な顔で瑠可を見つめるタケル。
「・・・ごめん。
 その前に一つだけ・・・俺も瑠可に話したいことがあるんだ。
 いいかな。」
「・・なに?」
「瑠可を見ていると思うんだよな。
 俺に、似てるって。」
瑠可の前にしゃがみ込むタケル。
「俺も・・・小さい時に、あることがあって・・
 それをずっと人に言えずに、苦しんできた。
 でも、今言いたいのはそんなことじゃない。
 もっと、大事なこと。
 ・・・瑠可。
 俺・・・君が好きだ。」
「・・・」
「君のことが好きだ。」
「・・・」

『衝撃の一夜』【原创】2008-6-30 16:52:08

第五話

『衝撃の一夜』

美知留(長澤まさみ)は、シェアハウスの前でずぶ濡れになって
うずくまっている宗佑(錦戸亮)を見つける。
「僕は・・・いつも・・・君を待ってる。」
その言葉に、思わず宗佑を抱きしめる美知留・・。

そんな美知留の様子を見ていた瑠可(上野樹里)は、
二人には声をかけずにそっと家に戻る。
「おはよう。」タケルが起きてきた。
「・・おはよう。」
「あれ?生ゴミは?」
「今、出した。」
「・・・美知留ちゃんは?」
「・・・」
その時瑠可の携帯が鳴る。美知留からだった。
「瑠可?あのね、私、これから美容室に行ってくる。」
「美容室・・」
「・・店長さんには御世話になったし、
 やっぱりこのままズルズルはやめられないから。
 一度、顔出さないとと思ってて・・。」
美知留はタクシーの後部座席に、眠っている宗佑と一緒にいた。
「・・・そう。これから行くんだ。」
「すぐ戻るから、心配しないで。」
「わかった。」
「じゃあ。」

「何?美知留ちゃんから?」エリ(水川あさみ)が聞く。
「うん。美容室に、挨拶しに行ってくるって。」


宗佑のマンション
宗佑の熱を測ってみると、39度1分もあった。
「やっぱり熱がある。
 一応、薬あるけど、あとで必ずお医者さん行ってね。
 鍋に、おかゆ作ってあるから、あとで食べてね。
 じゃ、私は。」
帰ろうとする美知留の腕を掴む宗佑。
「行かないで。」
「・・・」
「行かないで、美知留。」
「宗佑・・。
 帰らなきゃ。」
「帰るの?ずっとここにいて。」
「・・・ダメだよ。
 私は・・・もう宗佑と一緒にはいられない。
 また同じことの繰り返しになる。」
美知留は宗佑から目をそらしてそう言う。
「もう二度としないから・・。」すがるような目で美知留を見つめる宗佑。
「・・・宗佑。
 我慢の出来る人になって。
 私とずっと一緒にいたくても、仕事場の前で待ったり、
 マンションの前で待ったり、
 友達を待ち伏せてつけたり。
 そういうことを、しないでいられる人になって。
 そしたら、私はいつか、宗佑のところに戻ってこられる。」
「・・・」
「お願い。」
「・・・」

宗佑のマンションを出た美知留は、欠勤を続けていた美容室を訪れ、
店長の小百合(蘭香レア)に謝罪する。
「何日も休んで、ご迷惑をおかけしました。」
「辞めるならどうぞご自由に。
 さっさと帰って頂戴。」
「すみません、店長。」
「何?」
「私・・働きたいんです。
 またここで、働かせて下さい。」
「あのね!」
「何でもしますから。
 もう、迷惑をかけるようなことは、一切言いませんから。」

同じころ、瑠可はモトクロスの練習をしていた。
が、美知留が宗佑を連れて行くところを偶然目撃していた瑠可は、
美知留のことが心配で練習にも身が入らなかった。
「何やってんだ!もっと慎重にやれよ!」
林田監督(田中哲司)が叱る。
「はい!すみません。気をつけます。」
「怪我したら元も子もないんだぞ。」
「・・・はい。」

シェアハウス
「ただいま。」瑠可が戻ってきた。
「お帰り!」とタケル(瑛太)。
「何やってんの?」
「みんなの食器、磨いてた。
 結構、茶渋が付いてるんだよね。」
「へ~。ありがと!」

「瑠可。お帰り!」エリと友彦(山崎樹範)もやって来た。
「ただいまー。
 ・・・美知留は?」
「あ・・まだだよ。
 美容室に、挨拶に行ったっきり。」とタケル。
「そうか・・。」
「・・ね、やっぱりその美容室で彼に連れていかれて今頃・・」と友彦。
「ちょっと!」エリが叱る。
そこへ美知留が戻ってきた。
「ただいま!」
「お帰り!」
「美容室、随分手間取ったね。」と瑠可。
「ごめんね。
 あ、瑠可。
 私、やっぱりもう1度、あそこで働く事にしたの。」
「え・・」と友彦。
「でも、それって・・あいつの知ってる場所でしょう?
 危なくない?」とエリ。
「自分さえしっかりしていれば、大丈夫だと思う。
 もう、宗佑の言いなりにはならない。」
「え・・でも・・どう・・なの?」エリがみんなを見渡す。
「美知留ちゃんがそう思うなら、それでいいんじゃないかな。」
タケルの言葉に嬉しそうに微笑む美知留。
「本当に、大丈夫?美知留。」と瑠可。
「うん。心配しないで。」美知留が微笑む。
「うん。」
「美知留ちゃんに、これ、鍵、渡しておくね。
 今日から、美知留ちゃんもこのシェアハウスの一員ってことで。 
 OK?」とエリ。
「OKです!よろしく!」
「よろしく!」
  
翌日
仕事中のタケルの携帯が鳴る。
「もしもし?」
「ちょっと頼みごとがあるんだけど。いいかな。」
モトクロス練習場から電話で話す瑠可。

店の片付けをしながら、いつも宗佑がいた場所を見てみる美知留。
宗佑はいなかった。

店を出ながら携帯を操作する美知留。
メールか着信のチェック?
少しがっかりしたようにも見えました。


そんな美知瑠を、タケルが待っていた。
「タケル君!」
「お疲れ!」
「わざわざ、迎えてに来てくれたの?」
「ああ、あの・・SP代わり?
 ていうか今夜、瑠可の三鷹の家でパーティーがあるんだって。 
 で、美知留ちゃんを、連れてきてって瑠可に言われて。」
「へー!パーティー?」

タケルとともに瑠可の実家を訪れた美知留
「こんばんは!」
「美知留ちゃん!久し振り!」と
 母親の陽子(朝加真由美)。
「久し振りです。」
「まあ、綺麗になっちゃって。
 どうぞどうぞ!美味しいご馳走、待ってるわよ。」
「美味しいご馳走とか自分で言うか普通。」と瑠可。
「今晩は。」タケルも挨拶する。
「あなたがタケル君?」
「はい。」
「そう。カッコイイのね!
 美知留ちゃんの彼?」
「・・じゃ、ありません。」とタケル
「じゃあ・・ってことは・・」と陽子。
「あーもう、どうでもいいからさ、ね!早く座って座って!」と瑠可。
「いらっしゃい。」「こんばんは!」
父親・修治(平田満)と弟・省吾(長島弘宜)も挨拶する。

テーブルにつく5人。
「あー、すごいですね。
 これ、全部お母さんが作られたんですか?」とタケル。
「カルチャースクールで覚えたての料理、みんなに食べさせたくて
 しょうがないみたい。」と瑠可。
「味の保証はしかねますけど、どうぞ。」と修治。
「あら!岸本さんは筋がいいって褒められたのよ!」
「エリとオグリンも誘ったんだけど、
 今夜は二人映画デートだって。」と瑠可。
「そうなんだ!」と美知留。
「今ね、ローストビーフ出すからちょっと待っててね!」
「あ、私、手伝いますよ。何でも言って下さい。」と美知留。
美知留が陽子を手伝う。

「美知留ちゃんはほんっとよく気が利くし、
 女の子らしいのよね!
 瑠可に爪の垢、煎じて飲ませたいくらいだわ!」と陽子。
「僕も手伝います!
 いい香りですね!ローズマリーですか?」とタケル。
「わかる!?料理得意なの?」
「ええ、バイトがらみで、料理は多少勉強しています。」
「違うのね、最近の男の子は。」
「いえいえ。」
「瑠可!少しはあなたも、見習いなさいね。」
「もうどうでもいいからさ、早く食べようよ!」
「その乱暴な言葉遣い、いい加減直しなさいよ!
 お嫁に行ってから困るわよ。」
「嫁になんか行かないし。」
「失礼ねー。連れてきた人の前で。
 そんなそっけないこと言っていいの?
 ね!」タケルに微笑みかける陽子。
「さ、始めようか。」と修治。
「いただきまーす!」

その頃、友彦とエリはタクシーの中からある家を見つめていた。
「どう?行けそう?」とエリ。
「・・うん。行くよ。行かなきゃな・・。」
そう言いゆっくりと息を吐く智彦。
「離婚届も・・判子も持ったし。
 ちゃんと・・話つけてくるよ。
 さっさとさ。」
「うん。
 じゃあ・・頑張って!」
「おぉ。」

岸本家
タケルがトイレから出るのを省吾が待っていた。
「ね、姉貴の彼氏なの?」
「え・・いや。」
「姉貴が男の人連れてきたのって、初めてなんだよね。
 うち的には、大事件!」
「そうなんだ。」
「姉貴もさ、相当な変わり者だけど、
 多めに見てやってよね。」
「うん。わかった。」楽しそうに笑うタケル。

「でも、久し振りで本当に楽しかった。
 昔よく、お夕飯ご馳走になりましたよね。
 瑠可の部屋で、試験勉強してて、遅くなっちゃって。」
「ね!もう遅いから美知留ちゃん泊まってったら?」と陽子。
「おお。」と修治。
「そうすればいいよ。」と瑠可。
「でも・・迷惑じゃない?」と美知留。
「ううん。全然!
 タケルも泊まっていけば?」
「え・・俺?
 いや俺は帰るよ。」

タクシーの料金が3590円に上がり、少し苛々した様子で智彦を待つエリ。
そこへ友彦から電話が入る。
「ごめん。やっぱ、すぐに話・・終わらなくて。」
「あー。」
「今夜、こっちに泊まっていくから、
 やっぱ、帰ってて。
 ほんと、ごめんね。じゃあ。」
エリは携帯を閉じると、大きなため息をつき・・。

オグリンが話し終わる前にエリは携帯を
閉じようとしていました。
ショックだったのかな。
今回、エリとオグリンはセットで登場するシーンが何度かあって、
二人の親密さを感じていたんですが・・。

遠慮して岸本家を後にしたタケルは、シェアハウスに戻る。
すると、エリがひとりでグラスを傾けていた。
「おかえりー!」上機嫌なエリ。
「あれ?」
「ね、一緒に飲もう!じゃんじゃん飲もうよ!
 私明日仕事ないから大丈夫なんだー!」
「オグリンは?」
「え?今夜は奥さんとこ泊まるんだって。」
「あ、そう。」
「帰ってくんのかなー、あれは。
 全然わかんない。」
「え、そういう雰囲気なの?」
「そ!
 まああいつはね、元々奥さんに未練たっぷりだったからね。」
ワインをこぼすエリ。
「あー、こぼしてるよ。
 結構飲んだんじゃないの?」
「うん・・」
こぼしたワインをふき取るタケル。
「ねえタケル。」
「うん?」
「私って、いい女?」
「うん?」
「結構いい女だよね。
 美人だし、性格もさ、ネチネチしてなくて、
 竹を割ったみたいだーなんてよく言われるんだ!」
「エリは綺麗だよ。
 それに・・うん、すごく優しいし。」
「・・・」
「ここ拭くよ。」
ワインで汚れたエリの服をタオルで拭きとるタケル。
エリはタケルの手に自分の手を重ねる。
「・・・優しいのはタケルじゃん。」
「・・・」
タケルに両腕を回すエリ。
「美知留ちゃんと瑠可は?」
「・・瑠可んち泊まってるよ・・。」
「じゃあ今夜は誰も帰ってこないね。
 タケル!どうにかなっちゃおっか。」
「・・・」
エリはタケルにキスをし、シャツのボタンを外していく。
その瞬間、言いようのない嫌悪感に襲われたタケルは、
エリを突き放し…。

タケルは洗面所で、キスされた口を洗い続け・・。

タケルがエリのいる居間に戻る。
「・・・ごめん。
 エリが・・ダメっていうわけじゃなくって。」
「こっちこそ・・ごめん。
 そっか・・。タケルってやっぱ・・・そうなんだ。」
タケルが頷く。
「そっかなとは思ってたんだけど・・そっか。
 じゃああれだ。まんま、友達でいよう!ね!」
タケルがもう1度頷く。
「飲みなおそっか!飲もう飲もう!」

エリに本当のことを話せないタケルは、
自分はゲイだということにしておいた。
上手く説明出来ないから、そう思われても構わないと思ったのか、
その方がエリを傷つけないと思ったのか。

オグリンと一線を越えたあと、エリはいつもオグリンと一緒に
行動していたような気がします。
オグリンが自宅に帰ってしまったあとのエリは寂しそうで・・
でも彼女の性格上、強がって、そして寂しさを紛らわせようと
タケルにキス。
エリはもしかしたら今まで不倫ばかりしてきたのかもしれませんね。


瑠可の部屋
「ごめんね。ベッド占領しちゃって。」
「ううん。こっちも案外落ち着くし。」
ベッドの脇に布団を敷きながら瑠可が言う。
「懐かしいな。瑠可のこの部屋。
 変わってない。
 瑠可のお父さんも、お母さんも、変わってない。
 いい家族だよね。
 私も、こういう家を作りたかったんだ。
 早く家を出て、幸せになりたかった。」
「・・・あの男とは無理だよ。
 キツいかもしれないけど、美知留のために言っとく。
 あの宗佑ってヤツ・・美知留を幸せに出来る男じゃない。
 あ、タケルってどうよ!?」
「え!?」
「タケルみたいなヤツだよ。人を幸せに出来るのは。
 美知留もああいうやつ好きになればいいのにな!」
「瑠可は、どうなの?
 瑠可は、誰かを好きになったことって、ないの?」
「え・・」
「考えてみたら、中学の頃から瑠可の好きな人の話って
 聞いたことない。
 いっつも私の方が、相談に乗ってもらってて。」
「そうかな。」
「うん。
 好きな人、いないの?」
「・・・いるよ。
 ずっと前から、ずっと思ってる。」
「ずっと前って、いつから?」
「何年も。」
「その人は、知ってるの?瑠可の気持ち。」
「気づいてない。」
「伝えないの?」
「伝えない。伝えたってしょうがないし。」
「何でしょうがないの?
 そんな風に決め付けることないよ。
 だってさ、」
「しょうがないものはしょうがないの!
 ・・・いいじゃん、こんなことどっちでもさ。
 私は、美知留に元気になってほしかった。
 自分を取り戻してほしかった。
 だからここに連れてきたんだよ。」
「・・・そっか。
 ごめんね、瑠可。心配かけて。」
瑠可は首を横に振り・・。

翌朝、シェアハウス
ソファーで眠ってしまったエリに布団をかけ直すタケル。

コーヒーを飲みながら、マグカップの取ってをなぞるタケル。

「人はいつだって、人が思うほど単純じゃない。
 胸に小さな秘密や、悩みを抱えて生きている。
 瑠可・・・
 僕らはいつか、幸せになれるんだろうか。」


モトクロス練習場
瑠可のバイクには美知留がくれたお守り。

「美知留。
 私に出来ることは・・もう何もない。
 あなたが、自分で自分を救うのを、待っているしか・・・。」


美容室
昼休み中、迷いながら携帯をチェックする美知留。
着信も、メールも届いていなかった。

美知留は宗佑の仕事先に電話をしてみる。
「はい、児童福祉課です。」
「あの・・及川宗佑さんは・・」
「及川ですか?少々、お待ち下さい。」
「あ!繋がなくて結構です。
 そちらに今いらっしゃるかどうか知りたいだけなので。」
「すみません。及川は風邪で、この1週間欠勤しておりますが。」
「あ・・そうですか。」

その日の夜、美知留は宗佑のマンションを訪ねていく。
インターホンを鳴らしても応答はなく、
美知留は鍵を開けて部屋の中へ。
「宗佑?」
「美知留・・」宗佑はベッドで横になっていた。
「ごめん。どうせ、新聞の勧誘か何かだと思ったから。」
咳き込む宗佑。
「大丈夫?具合悪そうだね。
 熱は・・ないみたいだけど・・
 でも・・・痩せた。」
「君がいないから、食べる気に、ならないんだ。」
「ダメだよ。ちゃんと食べないと。
 今おかゆ作るから。」
「・・・」

「食べて。」
宗佑におかゆを食べさせる美知留。
「・・・美知留がいてくれるなら、ずっと病気でいたいな。」
「・・長くはいられないの。
 宗佑が食べ終わったら、帰るね。」
「帰さない。」
宗佑は美知留を抱きしめる。
「・・宗佑やめて。
 今こんなことしたら絶対にダメ。
 ねえわかって。ね、宗佑・・。」
宗佑の腕から離れる美知留。
「・・・ごめんね。
 今日は帰るから。」
「何でこんなになっちゃったんだ・・。
 君をこんなにしたやつが憎いよ。
 タダじゃおかない。あの瑠可ってやつ!」
「そんなこと言わないでって言ったでしょう!
 約束を守れない人と、私いられないよ一緒に。」
「それはこっちのセリフだ!
 約束を守れないのはそっちだろう!」
宗佑はそう怒鳴ると、茶碗を壁に投げつける。
「やめて・・。」
宗佑は美知留をベッドに押し倒し・・。

シェアハウス
「熱いうちに召し上がれ!」
タケルがパエリヤをテーブルに置く。
「そんなこと言わなくても食べるよ!」と瑠可。
「いただきまーす!」とエリと瑠可。
「やったね!」と瑠可。
「どうかなどうかな?」とエリ。
パエリアを口に運ぶ二人。
「うんまい!これ本場のスペインの味だよ。
 すっごいね!タケル!
 やっぱね、一家に一人は欲しいよね、こういう男!」とエリ。
「うんうん!美味い!」
二人の喜ぶ顔に微笑むタケル。
「あれ?美知留ちゃん遅いね。」
「そうだね。
 でも、美味いもんは早い者勝ちだからさ!」と瑠可。
「そういうことじゃなくて!」とエリ。

「ただいま!」美知留が笑顔で帰宅する。
「お帰り!」とエリとタケル。
瑠可は無言。美知留の顔を見ようともしない。
「最後のお客さん注文が多い人で、
 いろいろやったら遅くなっちゃって。」
「早く食べなよ。パエリヤ冷めるよ。」瑠可は笑顔でスプーンを渡す。
「わぁ美味しそう!
 あ、これ、タケル君が?」
「うん。
 あ、食器持ってくるね。」
「いいよ。私がやる。」
「大丈夫大丈夫!」
「でもタケル君も食べるでしょう?」
二人は台所へ。

食器棚から皿を取り出すタケル。
「ごめんね。」
「はーい。」
タケルは美知留に皿を渡したとき、彼女の腕に傷があることに気づく。
その視線に気付いた美知留は慌てて服で傷を隠し・・。

「ねえ・・オグリンはまだ帰って来ないのかな?」
美知留はそう言いながらリビングに戻っていく。
「うーん、ていうかね、もう帰って来ないんじゃない?
 あいつ奥さんとより戻す気かもね。」とエリ。
「いい加減なヤツだなー。エリにずるずる頼ってたくせに。」と瑠可。
「いいのいいの!私だって最初から期間限定のつもりだったし。」
「なんだよそれ。」と瑠可。
タケルの視線に俯く美知留。
その時、美知留の電話が鳴り、4人の間に緊張が走る。
「ごめんね。」携帯を手に席を外すと、美知留は廊下で着信を確認。
ほっとして電話に出る。
「もしもし。藍田ですけど。
 はい。わかりました。
 じゃあ明日、30分早く行くようにします。
 はい。じゃあ失礼します。」

「美容院の人?」エリが聞く。
「うん!
 明日、早い時間帯に予約が入ったから、少し早めに来てくれって。」
「・・・美知留まだその携帯使ってんの?」
「・・・うん。」
「捨てなよその携帯。
 それが鳴るたびにこっちもビクっとする。
 美知留があいつに付けねらわれてるみたいな気持ちになる。」
「・・・
 わかった。捨てるね。」
美知留は携帯を手に台所のゴミ箱に向かう。
「・・・待って!
 いいよ。捨てなくていい。」瑠可が止める。
「・・・」
「こんなの嫌だ。これじゃまるであんたの彼とやってることと
 変わらないよね。」
「瑠可・・」
「ちょっと走ってくる。」
瑠可が一人出ていく。

瑠可は自転車で夜の街を走りぬけ・・。

瑠可と一緒にタケルが作ったパエリヤを食べるエリは、
タケルとキスをしたことなど本当に無かったように振る舞います。
タケルもそんなエリを見て、安心したようです。
あれで気まずくなってしまったら、タケルはシェアハウスを
出ていってしまったでしょう。
タケルとエリのキスの秘密は、封印されました。

宗佑に襲われた美知留は、何事もなかったかのように帰宅。
それは自分の為?宗佑の為?瑠可の為?
もしこのことを瑠可が知ったら、宗佑のもとに走り出したでしょうね。
宗佑は瑠可に対して憎悪の気持ちを抱いているし・・。
その感情がどう爆発するのか、怖いです。

シェアハウス
タケルと話す美知留。
「わかってるんでしょう?
 私が瑠可に嘘をついていること。
 タケル君にはわかられてる気がするんだ。」と美知留。
「・・・彼に会ったの?」
「・・・うん。
 一緒にいても、幸せになれない人だって、瑠可に言われた。
 その通りだと思う。
 段々・・わかってきた。
 でも・・・まだ・・彼に惹かれてるの。
 宗佑を・・好きじゃなくなりたいのに・・。
 なりきれない・・。」
「しょうがないよ。
 彼が、変わるのを待てるか・・・
 待てずに、心が離れていくか・・・
 決めるのは、他の人じゃない。
 ・・・自分だけだから。」
「・・・優しいね、タケル君。」美知留がやっと微笑む。
「うん?」
「タケル君みたいな人を好きになればいいのにって、
 瑠可が言ってた。」
「瑠可が?」
「うん。
 瑠可もね、好きな人がいるんだって。」
「・・・」
「何年も前から、ずっと気持ち伝えられず、
 思い続けてるんだって。
 そう言ってた。」
「・・・あ、そう・・。」
「人生って・・簡単じゃないよね。
 急いで幸せになろうとしても・・・
 上手くいかない。」
「・・・」

部屋に戻ったタケルは、ベッドに腰掛け考え込み・・
大きなため息をつく。

カウンセリングルーム
「カウンセリング、受けるの初めてですね?」
「はい。」と瑠可。
「性同一性場外って言っても、その症状は人それぞれ違うんです。
 本を読んで、自分の症状だと思い込んでこちらに来られますが、
 実際には違うというケースもあるんです。
 あまり性急に結論を出さないように、
 慎重に考えていきましょう。」
「・・はい。」
「自分が性同一性障害だと思うのは、どのような点ですか?」
「自分の体が嫌なんです。」
「どういう風に?」
「小さい頃から、女の子の服を着させられるのが嫌で
 仕方がありませんでした。
 幼稚園の時も、スカートが嫌で、ズボン履いていました。」
「今でもその違和感は続いていますか?」
「続いています。
 自分の、胸を見るのが嫌で。
 シャワー浴びる時は、目をそらしています。」
「相談相手とか、好きな人はいますか?男の人は?」
「友達や仲間・・って感じます。
 恋愛感情を持ったことは、ありません。」
「どんなことが、辛いんですか?」
「身近な人たちに、本当の自分を、見せられないことです。
 好きな人や、家族に、嘘をついて暮らしてる・・。
 それが苦しいんです。
 時々たまらなく・・。」

カウンセリングを終えた瑠可は、タケルを呼び出す。

公園を自転車を押しながら歩く二人。
「何?話って。」とタケル。
「いや・・なんてことないんだけどね。
 タケルの顔が見たくなった。」
「はは。いや・・いつでも会えんだろ?
 同じところに住んでるんだからさ。」
「タケルと二人がいいんだよ。何でかな。
 タケルといると安心するんだよな。 
 自分を飾らなくて済む気がする。」
自転車を停める二人。
「五月晴れだなー!
 紫外線が良くないとか言うけど、
 素っ裸で日光浴したくなるよね。この空見ると。」と瑠可。
「・・・瑠可。」
「うん?」
「好きな人がいるんだって?」
「・・・」
「美知留ちゃんから聞いたんだ。」
「ああ。片思いもいいとこだけどね。」
「そっか。」
「そんなことより、今の私は、レース。
 次の第5戦には絶対に勝たなきゃ。
 日本選手権に出るためにもね!
 強くなりたいんだ。
 誰にも負けないぐらい、強い人間になって・・・
 いつか堂々と、好きな人の前に立ちたいんだ。」
瑠可の言葉に、タケルは笑顔を浮かべて頷き・・
そして切ない表情を浮かべる。

「瑠可・・
 君の笑顔が好きだ。
 君が誰を好きでもいい。
 俺は・・君を支えよう。
 君の笑顔を。」


このタケルのモノローグの時に流れた影像は、
二人で自転車を走らせるシーン。
「ちょっと!ちょっとねえ!スピード落として!」とタケル。
「ヘタレ!この程度でビビんなよ。」笑顔の瑠可。
二人が出会った時を思い出させるシーンでした。
でも、二人の笑顔がとても楽しそうで・・。


モトクロス試合の日
バイクのチェックをする瑠可に、林田が声をかける。
「岸本!」
「はい!」
「今日は48秒切るつもりで行け。
 48秒切ったら、お前を女じゃなく一人前のレーサーとして見てやる。」
「・・・」
「そしたら、飲みに行こう!
 レーサー同士。な!」
「はい!」

観客席には岸本ファミリー、そしてエリと美知留。

スタートラインに付いた瑠可は、美知留の姿を確認する。

15秒前、目を閉じて集中する瑠可。
そして、真剣な眼差しでまっすぐと前を見つめ・・・
スタート!
美知留たちが必死に声援を送る。

そんな中、美知留の携帯が鳴る。
宗佑からだった。
携帯をバッグに戻す美知留だったが、電話は鳴り止まない。
美知留は迷いながらも、席をはずし電話に出る。
「はい。」
「美知留・・今どこ?」
「・・・モトクロス場。」
「会いたい。すぐに来て欲しいんだ。」
「宗佑・・」
「具合が悪いんだ。」
「・・ごめん。行けない。
 今、瑠可の大事なレース中なの。」
「僕じゃなく、瑠可を取るんだね。」
「違うよ!
 ・・・もう・・・宗佑のわがままに振り回されたくない。」
「後悔するよ。今すぐ来ないと。」
「あとにして。ごめんね。」
美知留はそう言い電話を切ると、観客席に戻り瑠可を応援する。

最後のカーブで瑠可は先頭に走っていたバイクを追い抜き、
見事優勝!
観客席にいる美知留のはじけるような笑顔に、
瑠可はヘルメットを掲げて答えるのだった。

その夜、タケルのバイト先のバーで、瑠可の優勝記念パーティーが
開かれる。
監督も、レーサー仲間も、瑠可の家族も友達も瑠可も、みんな笑顔。

家族と乾杯する瑠可。
「おめでとう瑠可!」
「ありがとう!」
「良かったな、おめでとう。」と父。
「ありがとう。でもまだまだだよ。」
「これでまだまだか?」
「うん。
 あと、残り5戦、全部ポイント取って、
 日本選手権に出たい。
 で、いつかアメリカの大会にも出たい。」
「行けるよ!」と弟。
「それで、そのあとに、やりたいこともある。」
「そうか。」穏やかな笑顔を浮かべる父。
「お父さんには、いつか話す。」
「え?何でお母さんには話さないの?」
「話すよー。もうわかったから。」

岸本家の楽しそうな様子に微笑む美知留。

レース仲間と話す瑠可。
「岸本ってジャンプ上手いよね!」
「そんなことないよー。」

「瑠可、素敵だよね。」
美知留がタケル、エリに言う。
「俺も見たかったなー。」とタケル。
「全日本クラスの記録だったんだって!すごくない!?」とエリ。
「でも・・なんか遠い人になってっちゃうみたい。」と美知留。
「何言ってんの。そんなことないよ!ね、タケル!」
「・・うん!」

そんな中、美知留の携帯が鳴る。
「ちょっと、ごめんね。」席を外す美知留。

そんな美知留を瑠可が見ていた。

「もしもし。」
「美知留?」
「さっきは、ごめんね。
 今すぐ行くから、待ってて。」
「もう・・来なくていいよ。」
「・・・何で?」
「僕・・死ぬことにした。」
「え・・」
「これから死ぬ。
 さようなら。」
そう言い電話を落とした宗佑は、包丁を手に取り・・。

電話を落としたのと同じタイミングで
エリがワイングラスを落とします。


店を飛び出していく美知留を、割れたグラスを片付けながら
タケルとエリが不思議そうに見つめる。

美知留が店を出ると、瑠可が店の前のベンチに座って待っていた。
「美知留!
 どこ行くんだ、美知留。」
「・・・」
「あいつのとこ?」
店からタケルとエリも出てきた。
「・・違うよ。ちょっと先に、帰ってるだけ。」
「嘘つくなよ!」
二人に駆け寄ろうとするエリをタケルが止める。
「知ってたよ。
 あなたが嘘ついて、彼と会ってたの。
 でも黙ってた。
 いつか気づいてくれるだろうと思って。」
「・・・」
「強くなれよ美知留。
 もっと強くなれるはずだよ。
 何で負けちゃうんだよ。」
美知留は泣きながら答える。
「私・・弱虫だもん。
 瑠可はいいよ。
 瑠可は・・強くて・・素敵で・・・家族に愛されてて・・
 才能があって・・
 そうやって・・輝いてて・・。
 でも私は・・・弱虫だから・・。
 宗佑の弱さがわかる。」
「・・・」
「・・・今は・・・彼の側にいてあげたいの。
 ごめんね・・。」
美知留はそう言い、瑠可の前から走り去る。

タケルは瑠可に歩み寄り、肩を抱こうとする。
「触んなよ!」
「・・・」
「触んな!」
瑠可はタケルに冷たくそう言い放ち・・・。

『引き裂かれた絆』【原创】2008-6-30 16:50:28

第4話

『引き裂かれた絆』
タケルがティッッシュを渡す。
「思うんだけどさー、DVやる男って大体性格がしつこいんだよね。
 絶対ストーカーみたいになって、
 美知留ちゃんのこと追い回すんじゃない?」とエリ(水川あさみ)。
「そうだうん!
 さすが、数こなしている人は言うことが違う、」と友彦(山崎樹範)。
「とにかく今は、美知留にあの男を近づけるのは危険。」と瑠可。
「そうだね。距離は置いた方がいいかもしれない。」とタケル。
「この家がそいつに辿られる可能性って、どれ位あるの?」とエリ。
「美容室は変えた方がいいね。
 それと・・携帯は、絶対に出るなよ。」と瑠可。
「わかった・・。
 でも美容室は・・」
「タケル、なんか、あんたのツテは無いの?」と瑠可。
「探してみるよ。」

バイト先から父親の修治(平田満)に電話する瑠可。
「ストーカー!?」
修治の言葉に驚き、夫が持つ受話器に耳を寄せる妻・陽子(朝加真由美)。
「お前、ストーカーに合ってるのか?」
「違う違う。私じゃないよ。私の、友達。
 悪い男から友達匿ってるの。
 だから、男から電話かかってきて、私の住所聞かれても、
 絶対教えないで欲しいんだ。」
「ああ・・。」
「あ、そいつ、区役所の福祉課とか名乗るかもしれないけど、
 信用しないで。」
「わかったよ。本当に、お前じゃないんだな。」
「しつこいなー。違うよ。」

シェアハウス
美知留にコーヒーを入れるタケル。
「あ、今日は瑠可のカップでいい?」
「うん、ありがとう。」
「はーい。」
「タケル君、仕事は?」
「うん?ああ・・ま、今日は、大丈夫だよ。」
「そう。」
インターホンが鳴る。
「・・はーい。」緊張しながら玄関に向かうタケル。
その様子を心配そうに見つめる美知留。
「ごめん!開けて!俺俺!」友彦だった。
「あ!オグさん?」
「ごめんね、タケル君!」
「オグさん!」
「オグリンでいいってー。」
「忘れ物!財布と鍵!」
「あ、これか!」
ソファーにあった財布、鍵、そして新聞を渡すタケル。
「気が利くー!ってこれ、昨日の新聞じゃん!
 あ、美知留ちゃん、じゃーね!
 行ってきマウス!」
美知留が微笑む。
「行ってらっしゃい!」友彦を見送るタケル。

インターホンの音に、美知留もタケルも、それが
宗佑では・・と思い、緊張が走りました。
美知留はそれが宗佑でなくて、少しがっかりしたような・・
そんな風にも見えました。


美容室
「藍田は本日はお休みを頂いております。」と令奈(西原亜希)。
「そうですか・・。」と答えながら店内を見渡す宗佑。
「急に休まれると、困っちゃうんですよね、こっちも。」
「じゃあ、もし出てきたら、こちらに連絡していただけますか?」
宗佑が名刺を渡す。
「はい、わかりました。」
「お願いします。」宗佑が帰っていく。
令奈はその名刺をすぐにゴミ箱に捨てた。

モトクロス練習場
練習を終えた瑠可に駆け寄る監督・林田(田中哲司)。
「だいぶいい感じだ!戻ってきたな!
 トレーニング頑張った甲斐あったな!
 重心が、安定してきた。」
「はい!」
「よーし!今日は飲みに行くか!奢ってやるよ。」
「・・・今日は、ちょっと。」
「何だよー。」
「家で人が、待ってるんで。」
「男か?ふーん、いいね、お盛んで。
 わかったわかった!じゃあ又今度な!」瑠可の肩を叩き立ち去る林田。
「・・・林田さん!」
「うん?」
「すぐに、男だとか女だとか、そういうこと言うのやめてくれます?」
「は?」
「私はレーサーです。
 女とかじゃなくて、レーサーとして見て下さい。」
「・・・それは無理だな。
 梨をリンゴだと思えと言うのと一緒だよ。
 お前は女だもん。」
「・・・」
「お前は優秀な、女のレーサーだ!」
「・・・」複雑な表情を浮かべる瑠可・・。

シェアハウス
冷蔵庫の横の小物入れにはペンとシールが入れてあり、
『自分の物には色を塗って名前を書こう!』と書いてある。
「瑠可ー、白滝切るよー。」とタケル。
「うん。
 あ、エリ、豆腐使っていい?」
「えーっ!120円!」
「いいじゃんー。金ないんだって。」
「えーっ。」
「お餅入れようよ、俺買ってきたやつ。」と友彦。
「スキヤキに餅入れる?普通!」とエリ。
「え?スキヤキに餅ってマストでしょう!?」と友彦。
美知留は食器を並べながら、そんなみんなのやり取りに微笑む。
その時、美知留の携帯が鳴る。

部屋の外に出て携帯をチェックする美知留。
着信履歴には、宗佑から1分おきの履歴が残っていた。
伝言メッセージを再生してみると、
『美知留・・戻ってきてほしい。
 一緒にご飯食べよう。
 二度と君に手をあげないって約束するから。』
携帯を見つめる美知留から、瑠可が携帯を取り上げる。
「聞くなよ、こんな伝言。」
「・・・」
「戻ってきてくれ。
 暴力は二度と振るいません。
 だろ?」
「・・・そうだけど。」
「信じちゃダメだよ。
 戻ったら・・また同じことの繰り返しになる。
 傷つくのは自分だよ。」
「・・・」
「さ、食べよう!みんなでスキヤキだ!」

スキヤキ鍋を囲む5人。
鍋奉行の友彦が張り切って指示をするのを無視して、
みんなが箸で鍋をつつく。
みんなから遅れて箸を伸ばそうとする美知留。
「美知留遅れとってんじゃん。」
瑠可は美知留の皿を奪う。
「肉入れてあげるから。」
「ありがとう。」
「あと、豆腐と、白滝と、ネギと、食えないもんある?」
「ううん。」
「なんかさー、瑠可の美知留ちゃんに対する態度って、」とエリ。
「何?」と瑠可。
「男みたいなんだよね。
 男がうーんと年下のさ、可愛くてしょうがない彼女を、
 庇ってるみたい!」
「・・そう?」とタケル。
「俺わかる俺わかる!」と友彦。
「そんなことないよ。私誰にでも優しいもん。」と瑠可。
「えーっ、そんなことないー。
 私への態度と全然違うー。」とエリ。
「そう?」
「うん。
 まあ美知留ちゃんはね、保護本能をくすぐるところがあるからね。」
「うんうんうん!そうそうそう!
 ・・・全くさー、こんな可愛い子を、叩いたり蹴ったりするて・・
 どんな男だよ。」と友彦。
「うん。」とエリ。
「見た目は普通の男だよ。」と瑠可。
「中身はサイテーだね!」とエリ。
「変態だよな、間違いなく!」と友彦。
「宗佑のことそんな風に言わないで。」
美知留の言葉に驚く4人。
「宗佑だって・・叩きたくて叩いてるんじゃなくって・・
 私を叩く時は、自分も苦しんでるんだと思うんだ。
 ・・・わかって、もらえないかもしれないけど・・。」
「いたいけだなー、美知留ちゃん。
 こんなにされてるのに・・。」と友彦。
「・・・とにかくさ、今は、飲んで、食べて、
 元気出そうよ、ね!」とタケル。
「そうだね!
 じゃあこれ食べたら、みんなでババ抜きしようよ。」と瑠可。
「よし!」とタケル。
「又ババ抜き!?」と友彦。
「また寝れないよー・・」とエリ。
そんなみんなの様子に美知留も微笑む。
「ほら、美知留ちゃんも飲んで。」タケルがビールを注ぐ。

重くなりそうな雰囲気を、タケルが上手に変えてくれました。
気が利